曲名解説

・第1章:ヘルプ!:ザ・ビートルズ

1965年7月にシングル盤として発売され、全英シングルチャートとBillboard Hot 100の両方で第1位を獲得したビートルズナンバー。リアルタイムでは、小学校の時に映画『ヘルプ! 4人はアイドル』を見た記憶しかない。ビートズルでは僕はジョン・レノン派なので、この曲を第1章のタイトルに設定できたのは嬉しい。


・第2章:デイドリーム・ビリーバー:ザ・タイマーズ

この作品では、僕の中学時代に聴いた曲を「章」のタイトルにしようと思っていたのだが、この曲は1989年にリリースされた謎の覆面バンド「ザ・タイマース」から拝借。忌野清志郎によく似ている「ZERRY」の日本語歌詞は、今は亡き清志郎のお母様との思い出を歌っており、「ずっと夢を見て安心していた。ずっと夢をみさせてくれてありがとう」という歌詞は泣ける。オリジナルは1967年のモンキーズのシングル。


・第3章:あなたのとりこ:シルヴィ・ヴァルタン

小中学校の頃の洋楽は、アメリカ、イギリス以外にフレンチポップスと呼ばれるフランス語の曲が多くヒットチャートに登場していた。ミッシェル・ポルナレフ、フランソワーズ・アルディ、フランス・ギャルなどがその代表で、中でもシルヴィ・ヴァルタンは、レナウンのTVCMに出演したこともあり(ワンサカ娘)人気があった。「あなたのとりこ」は、その彼女の代表曲で、1968年にリリースされたが、1971年にも再びチャートイン。その後も映画「ウォーターボーイズ」の挿入歌になったり、多くのTVCMソングに採用されている。


・第4章:わたしの彼は左きき:麻丘めぐみ

1973年7月にリリースされた麻丘めぐみの通算5枚目のシングル。当時、巷間では左利きに対する差別意識が若干残っていたこともあるが、本作のヒットがきっかけで、左利き用品が多数販売され、左利きが市民権を得たとも言われている。ちなみの筆者も左利きで、ケイの本名は「めぐみ」である。


・第5章:どうにもとまらない:山本リンダ

1966年にデビュー曲「こまっちゃうナ」で人気を博した山本リンダが、1972年にイメージチェンジを図り、大ヒットした曲。それまでの「ぶりっこ」イメージから、ヘソ出しルックという当時としては過激な衣装で歌い踊った。学校では男子に人気があり、よく廊下で「狙い撃ち」を踊っていた奴がいた。


・第6章:ファミリー・アフェア:スライ&ザ・ファミリー・ストーン

アメリカのファンクバンド、スライ&ザ・ファミリー・ストーンが1971年に発表した9枚目のシングル曲。日本語に訳すと「家庭の事情」というタイトル曲は、親と子供たちの関係を歌い、「勉強好きな大人に成長する子供もいれば/火を付けて燃やしたくなるような大人に成長する子供もいる」という辛辣な内容もある。この曲は多くのアーティストにもカバーされ、イギー・ポップやポール・ウェラーも歌っている名曲。


・第7章:金色の髪の少女:アメリカ

イギリスで結成されたのにアメリカというバンドの曲。アコースティックギター3本の構成だが、日本のフォークのようにじめじめせずに、後の時代に一世を風靡するウエストコーストサウンドのような爽やかな音色である。


・第8章:銀の指環:チューリップ

1973年4月にリリースされた「心の旅」は、中学生にはとても人気があった。この曲は「心の旅」から続く姫野ボーカル3作目で1974年1月にリリース。当時、僕はチューリップのボーカルは、財津和夫ではなく姫野達也だと思っていた。


・第9章:ふざけるんじゃねえよ:頭脳警察

「頭脳警察3」のA面の1曲目。ファーストアルバムが発売中止、セカンドは9曲中3曲が放送禁止になった、日本のパンクバンドのルーツ。この曲でさえも「まわりを気にして生きるより、ひとりで勝手気ままにグラスでも決めている方がいいのさ」と過激な歌い出しで始まっている。


・第10章:学生街の喫茶店:ガロ

1972年6月にリリースされたガロの3枚目のシングル。卓越したコーラスワークとギターテクニックにより「和製CSN&Y」と称されており、筆者は初期の2枚のシングルの方が好き。ギターを担当する堀内護と日高富明のふたりが、当時98万円のマーティンD-45を使用しているのが、憧れだった。1976年に解散。


・第11章:危険なふたり:沢田研二

1973年4月発売された沢田研二の6枚目のシングル。テレビの歌番組に出演する際には、井上堯之バンドがバックを務めており、「PYG」を彷彿とさせるメンバーが嬉しかった。


・第12章:ひと夏の経験:山口百恵

1974年6月に発売された山口百恵の5枚目のシングル。前年の「青い果実」では「あなたが望むなら、わたし何をされていいわ」と歌い、この曲では「女の子の一番大切なものをあげるわ」と歌う。山口百恵と同世代の僕には、モヤモヤする曲であった。ちなみに「青い果実」がリリースされたのは、1973年の9月なので、カンジの自転車の後ろで、ケイが鼻歌を歌うのはどうしてだろう(笑)。


・第13章:結婚しようよ:よしだたくろう

吉田拓郎が1972年に発表したシングル。それまで四畳半的な日常や、反戦などがテーマだったフォークソングが、この一曲で大きく変化した。個人的には、アレンジを担当した加藤和彦の功績が大きく、拓郎自身の過去の曲の中で、こんな不思議な音楽空間を表現した曲は、この曲だけだと思う。とりわけイントロの部分は素晴らしい。


・第14章:青春の光と影:ジョニ・ミッチェル

ジュディ・コリンズが1967年にヒットさせた曲。作詞作曲はジョニ・ミッチェル。数多くのアーティストがカバーしている名曲。本人も何度かリメイクしているが、2003年の映画「ラブ・アクチュアリー」で使われたバージョンは最高だと思う。


・第15章:ファンキー・モンキー・ベイビー:キャロル

1973年6月に発売された7枚目のシングル。当時のロックバンドのシングルとしては前代未聞の30万枚を売り上げ、キャロル最大のヒット曲となった。中学時代に音楽が社会に影響を与えた曲があるとするなら、吉田拓郎の「結婚しようよ」と、この曲だと思う。


・第16章:家をつくるなら:加藤和彦

1971年のアルバム『スーパー・ガス』に収録されていたが、ナショナル住宅のCMソングに選ばれたことで、1973年3月シングルとしてリリースされた。当時モービル石油のCM「気楽にいこう:マイク真木」など、ほんわかした時代であったことを覚えている。ちなみに、モービル石油のCMで車を押しているのが、鈴木ヒロミツ。最後の「車はガソリンで動くのです」というナレーションは加藤和彦。


・第17章:どうしようかな:村八分

エレックレコードから発売された二枚組のアルバム「ライブ村八分」に収録。柴田和志(チャーボー)と山口冨士夫(フジオ)は、ミックとキース以外のなにものでもなく、はっぴいえんどと内田裕也がやっていた「日本語のロック論争」など銀河の果てまで吹っ飛ばすくらいの破壊力があった。ギタリストのチャーがセックス・ピストルズを聴いて「これ村八分と一緒じゃん」と発言したのは有名な話。筆者は大学時代に京大西部講堂で再結成ライブを観たことがある。チャーボーは1994年、フジオは2013年没。合掌。


・第18章:ラブ・ミー・テンダー:エルヴィス・プレスリー

1998年にリリースされた、RCサクセションの11枚目のスタジオアルバム「カバーズ」で取り上げている。収録曲すべてがカバー曲で『ラブミーテンダー」は反原発の歌。当時RCのレコードを発売していた東芝EMIの親会社が、原子力発電を請け負っていたために、圧力がかかり発売中止にされた。もちろんケイは1999年からやってきたので、カンジが口を滑らせたことに気がついている。


・第19章:死ぬのは奴らだ:ウイングス

ウイングスの5枚目のシングルとして1973年6月に発売。現在もポール・マッカートニーのライブでよく取り上げられている。海外の野外コンサートでは、「Live and Let Die」の歌詞の部分で「どっかーん!」と打ち上げ花火があがる。2018年の東京ドーム公演でも、さすがに花火は打ち上げられなかったが、大迫力の爆発でポール自身が首をすくめていた。


・第20章:孤独の旅路:ニール・ヤング

4作目のアルバム「ハーヴェスト」に収録されている、ニール・ヤング最大のヒット曲。『僕は「黄金に輝く心」を探し続ける鉱夫』だと歌う名曲。ジェイムス・テイラーとリンダ・ロンシュタットがバック・コーラスに参加している。


・第21章:スモーク・オン・ザ・ウォーター:ディープ・パープル

1972年に発表したアルバム『マシン・ヘッド』に収録されている、ハードック小僧なら必ず弾いたことがある名曲。文中に出てくる『無頼怒殺火ブラッドサッカ

』というバンド名は、筆者が高校一年で友達とキャンプに行った際に、田舎のディスコに出演していたアマチュアバンドの名前。


・第22章:ジ・エンド:ドアーズ

ドアーズの1967年のデビュー・アルバム『ハートに火をつけて』のB面最後に収録されている。後に1979年公開の映画『地獄の黙示録』にも使われていて、映画の難解さ、さらに楽曲が難解にしていると思った。


・第23章:天国への階段:レッド・ツェッペリン

第10章にも出てくる、『レッド・ツェッペリンIV』に収録されている1971年の名曲。第21章のスモーク・オン・ザ・ウォーターと共に、楽器屋で試し弾きする際に、登場する。アメリカの楽器店では「NO Stairway to Heaven !」と張り紙がされているという。


・第24章:ムーンチャイルド:キング・クリムゾン

1969年の『クリムゾン・キングの宮殿』のB面の1曲め。曲の雰囲気と章の内容がぴったりだと思って選択。ちなみにの「21世紀の精神異常者」は、近年タイトルにクレームがあり「21世紀のスキッツォイド・マン」に変更されている。なんだかなあ…。


・第25章:あなたがここにいてほしい:ピンク・フロイド

1975年にリリースされた『炎〜あなたがここにいてほしい』に収録されている曲。このアルバムは、ピンク・フロイドのオリジナルメンバーであるシドバレットに捧げられており、とっても切ない曲。


・第26章:スローバラード:RCサクセション

1976年発売のアルバム『シングル・マン』の先行シングルとしてリリース。こんな名曲があるにも関わらず、シングル・マンは販売不調のまま、発売後1年たたずに廃盤となり、その後多くの再発希望活動の後に再リリースされた。その廃盤で大きな挫折をした忌野清志郎も、再リリースの時期と同じくして、髪の毛をビンビンに逆立てて、派手なメイクとともに、ロックンロールバンドとして再始動した。

そもそも、この曲名を、この小説のタイトルにしようと思っていたくらい、大好きで思い入れの深い曲。

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