第44話 決着
広間の中央で、再びベルムさんが石像を引きつけ、ルクスさんが角のあった場所に向かって矢を放った。
よし、僕もとどめの攻撃を始め――
「フォルテ君、ちょっといい?」
――ようとした途端に、マリアンさんに呼び止められてしまった。
「あ、はい。なんでしょうか?」
「ひょっとしたら聞こえてたかもしれないけど……、もう回復術を使う魔力は残ってないの」
そういえば……、そんな声が聞こえたような……。
「だからね。いくら痛みを感じないからって、攻撃にあたりながら詠唱なんてのは、絶対にダメよ」
「……はい。さすがにこの期に及んで、そんなことはしませんよ」
「……そう。ならよかったわ」
マリアンさんは目を細めながら、穏やかに微笑んだ。
「それじゃ……、存分にぶちかましなさい!」
「はい! 西と東の狭間に生まれしものよ……」
詠唱を始めると、石像がこっちに顔を向けた。
「グルルルルルル……」
うなり声とともに、角の根元が赤く光り出す。
「あらゆるものを貫き、命を与えるものよ……」
「グルァッ!」
叫び声とともに、火球が降り注ぐ。
「今ここに来たりて、我が望みを叶えたまえ……」
それを避けながら、詠唱を続ける。
「ガァァァァッ!」
「この……、いい加減に……、止まれ!」
ザクッ!
「ガッ!?」
ベルムさんに片脚を切断された石像が倒れ、火球が止まる。
「我が前に
そのすきに、詠唱を続ける。
「グルルルルル……」
「大人しくしてて」
シュッ!
トスッ!
「もう気が済むくらい、暴れ回ったでしょ!」
ガンッ!
「ガァッ!?」
再び魔術を使おうとした石像の鼻面に、ルクスさんが矢を撃ち込み、マリアンさんが杖をたたき込む。
「かの者の一切の
……よし、いける!
「……雷の聖槍!」
ピシャッ!
「グァァァァァァァァァァァァァ……」
パラパラパラパラパラ……
稲妻に核を貫かれた石像が、砂になって崩れ去る。
これで……、ようやく終わった……。
「へえ……、雷属性の魔術を使いこなすなんて、やるじゃない」
「うん。かなり難しい魔術って聞くのに、すごいよ」
マリアンさんとルクスさんが、小さく拍手をしながら微笑んだ。
あの二人に認められるなんて……。
「フォルテ!」
「は、はい!」
急にかけられた声に顔を向けると、ベルムさんも穏やかに微笑んでいた。
「この戦いに勝てたのは、お前のおかげだ……、よくやったな」
「……はい! ありがとうございます!」
……パーティーに入ってからずっと、手柄を立ててこんな言葉を聞きたいと思ってた。
でも、今は手柄を立てられたことよりも――
「さて、じゃあここを出ようか。リグレとヒューゴが外で待ってるから」
「はい!」
――リグレを無事に守り切れたことの方が嬉しい、かな。
それから、階段や広間を何回も通り抜けて、ダンジョンの入り口までたどり着いた。
入り口から少し離れた場所には、泣きじゃくるリグレとオオカミに変身したヒューゴさんの姿があった。
「ぐすっ……、みんな、まだ、帰って……、こない……」
「大丈夫っすよ、リグレちゃん! みんな、すっごく強いんすから!」
どうやら、オオカミの姿で、あやしてくれてたみたいだ。
「あ! ほら、ウワサをすれば、みんな帰ってきたっすよ!」
「え……!? フォルテちゃぁぁぁん!」
リグレは猛スピードで、僕の膝にしがみついてきた。
「ただいま、リグレ」
「おかっえり……、ぐすっ……、生きててっ……、よかったぁぁぁぁ……」
「ははは、当たり前だろ。絶対に死なないって約束したんだから」
実際はけっこう死にかけたけど……、黙ってよう。
「フォルテちゃん……、危ないことして……、ぐすっ……ごめんなさい……」
「ああ。今回は上手くいったからよかったけど、もう無茶なことしちゃだめだぞ」
「うん……」
「ダンジョンではちょっとしたことが、命に関わることだってあるんだから」
「分かった……、もう危ないこと……、しない……」
「そうそう。一流のダンジョン探索者になるなら、自分と仲間の命を最優先にしないとな」
リグレは膝にしがみついたまま、うなずいた。
これで、さすがに一人で危ないことはしないだろう……、あれ?
この言葉って……。
「はははははは!」
突然、ベルムさんが笑い出した。
いや、まあ、笑いたくもなるんだろうけど……。
「そんなに笑わなくても、いいじゃないですか……」
「あはははは、すまない。ただ、お前の口から、その言葉を聞く日がくるとは思わなかったから……」
ベルムさんは目尻を拭くと、僕の肩を軽く叩いた。
「今の言葉、もう忘れるんじゃないぞ」
「……はい、肝に銘じます」
「そうだな。その言葉と、あの局面でも諦めなかった根性と、誰かのために必死になった経験を忘れなければ、どこにいったって通用するから」
穏やかな微笑みとともに、ふたたび肩が叩かれた。
ルクスさんと、マリアンさんと、ヒューゴさんも、穏やかな表情でうなずいてる。
どこに行っても通用する、か。
三ヶ月前なら、こんな言葉は絶対かけてもらえなかったはずだ。
でも――
「さーて! じゃあ、店に戻って打ち上げパーティーよ! お客さんに出すはずだったケーキ、みんな出してやるんだから!」
「え、ケーキ!? やったぁぁぁぁ!」
「あ、こら、リグレ! 危ないことをしないって言ったそばから、一人で走り出すな!」
僕の制止も聞かず、リグレは膝から離れて、相変わらずの猛スピードで走り去っていった。
体力は限界だけど……、追いかけてやることにしよう。
――この猛スピードでよく走る愛弟子のおかげで、ここまでこられたんだ。
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