第37話:襲撃と警告
「強盗だ、強盗が襲ってきたぞ」
性根を叩き直した傭兵団が襲撃者を見つけたようだ。
よほど俺に特別鍛錬されるのが嫌なのだろう。
以前なら酔っぱらったり居眠りしていた警備も真剣にやっている。
まあ、死んだ方が楽な状態で殺してもらえない激しい訓練。
そんなモノをやらされるのが嫌なのは当然だろう。
「陽動に気をつけろ。
二陣三陣は一陣が突破される前提でいろ」
さて、強盗団は傭兵団の守りを突破して、騎士団や従士団が守る館にまでやって来れるかな。
「公爵閣下、騎士団と徒士団の待機部隊が配置に着きました。
非番の者達は完全装備を整えている最中です」
「分かった、素早い対応には満足している」
俺の言葉を受けて王都家老とも言うべきハウス・スチュワードが表情を緩める。
俺を裏切ってミヒャエルに媚び諂った屑だ。
俺が復権した事で、何時厳しい処分をされるのかとずっと怯えている。
正直直ぐにでもぶち殺したいのだが、今はまだ代わりになる人材がいない。
公爵家が内輪争いをしているという噂がたつと、王家や貴族家が余計なちょっかいをかけてくるから、今処分することができないのだ。
「だが傭兵団の警備網を突破した強盗を取り押さえられなければ、それ相応の処分をするから、その覚悟はしておけ」
俺の警告を受けて王都家老の表情が真っ青になる。
失敗したら処刑されると考えたのかもしれないが、そんなことはしない。
役に立たないのなら役に立つように叩き直すのみ。
「心配するな、殺したりはしない。
傭兵団と同じように鍛え直してやるだけだ。
俺はお前に期待しているからな。
処分せずに期待に応えられる家臣に育ててやる」
「ヒィヒイヒヒ」
失礼な奴だな。
俺の事を死神を見るような目で見やがる。
まあ、こいつも俺が傭兵団にどんな訓練をさせたのかを知っているのだろう。
「もう用が済んだのなら指揮が執れる場所に移動したらどうだ。
なんなら俺が直接指揮を執るが、その場合は王都家老など不要という事だぞ」
「や、や、や、やり、ます。
す、す、すぐ、直ぐにやります。
ですから、公爵閣下が直接指揮など執られないでください。
下世話な事は家臣にお任せください」
用済みで首を切られるのを恐れたのだろう。
例えではなく、本当に首を切られると思っているようだ。
こいつは俺がミヒャエルをこの手で殺した事を知っている。
いや、それだけでなく、ミヒャエルが指揮した傭兵や犯罪者が俺に殺されたのも、嫌というほど知っているのだ。
「だったらさっさといけ。
ひとつだけ警告しておくぞ。
王家や他家に逃げ込めるとは思うなよ。
もうお前達には呪いをかけているんだ。
屋敷の外に出たとたんに呪いが発動して死ぬことになるからな」
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