第9話 卒業式

あの日から間もなく

僕たちはこの学校を卒業する


卒業式を終えると

教室や廊下で

最後の別れを惜しむ人たちが

泣いたり

笑ったり

しながら写真を撮り合っていた


僕には関係ない事だと

三年間のポリシーを貫くように

鞄と卒業証書を持って教室を出る


長い廊下

人を避けるように編みながら

僕は下駄箱を目指す


この廊下

こんなに長かったか?


下駄箱で

履いていた上靴をゴミ箱に投げ入れ

スニーカーに履き替える



靴の中に何かある


左足をぶら下げたまま

靴を持ち上げ

覗き込む


紙?

ゴミ?


何度も折りたたまれ紙

キラキラしたハートのシールで封をされている

桜色だ


それを開いてみる


”桐山くん

剣道場の裏で待っててください

                  佐々木”


佐々木・・・?


次の瞬間

浮かんだのは

雪の日の彼女だった


だって

剣道場の裏で会った人は

三年間で彼女しかいなかったから


僕はその紙をポケットに入れて

剣道場の方とは逆に

校門の方へ歩き始めた


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る