姉:4月

 ニュースでは景気は良くなっていると言っているのに、結局、就職先は見付からず、人材派遣会社に登録する事になった。

 そして……すぐに仕事が決った。

 だが……その仕事は……。

 他社への派遣ではなく……人材派遣会社内の仕事だった。

「ウチの会社の役員の秘書をお願いしたいのですが……」

 派遣会社の担当の人は、そう切り出した。

 五十前後ぐらいの男の人だった。

 太り気味だが、愛想の良さそうな人だった。

 だが……気になる点も有る。

 髪の毛の乱れ……。髭の剃り残し……。眼鏡のレンズの汚れ……。充血した目に目脂……男だとしても気になるほどの顔の肌荒れ……これは、花粉症だろうか?……そしてどことなく疲れた表情。

「役員の方の秘書ですか……?……でも、大学を出たばかりで、そう云う経験は……」

「ああ……その役員と云うのは、ウチの創業者の1人で……結構な齢なので、PCやスマホが全然使えなくて」

「ええっと……では?」

「はい、その重役のメールやスケジュールの管理に……あと、PCからの勤怠や旅費・経費の入力や書類のプリントアウトの方法も良く御存知ないので、代りにやっていただきたいので……時間は……」

 月〜金の定時。土日・祝日・年末年始は休み。他にGW中の平日と夏のお盆の時期に特別休暇。

 給与は、大卒の初任給としては……やや高め。

「ただ……」

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