第2話 奴隷二匹、発送中

(さーて、無事に売られたわけだが~?)


 猿轡に手錠。魔眼対策に遮光性の布で目隠しをされ、鎖で腕をぐるぐる巻きにされるという徹底ぶり。足枷にはおもりが繋がれている。


(こんなガチらんでも良くない?)


 なお、猿轡は噛み砕かれないよう最硬の物質で作られたもので、手錠は魔力の流れを阻害し、鎖には<実体化>を解けないような仕組みがある。


(まぁマリリンの努力の賜物かぁ……)


 ここまで警戒されているのも、希少価値をこれでもかと示し、どれほどの強さがあるかを盛りに盛ったおかげである。——強さに関しては、事実が多く含まれているが。


 そして現在は輸送中。勿論、目隠しされているため移動手段や現在地は不明だが、周囲の会話的にオークション会場へ連れていかれることは確実である。


 さらに、八宝菜の他にも売られる人——人間でない可能性もある——がいる。


「ねぇ君、大丈夫? 耳は……聞こえるのかな」


 少年だ。恐らく、一人。先程から話しかけられているが、猿轡のせいで当然返答はできない。分かった上なのか、その判断もできないほど幼いのか。


(呻き声くらい出してやるか?)


「おー、あー」

「……! 僕の名前はサヴァイ、獅子の獣人なんだ。君は……人間かな?」


 八宝菜は首を横に振る。厳密に言えば“種族:人間の幽霊”なのだが、人間味は色々な意味でないため、この反応で間違っていないだろう。


「そっか、耳も尖ってないし……尻尾もないし……ハーフ?」


 もう一度首を横に振る。このやり取りに何の意味があるかは分からないが、八宝菜は暇なため付き合っていた。


「違うんだ……。……ごめんね、その口の、取ってあげられないんだ。僕も手を縛られてるから……」

「ヴー」


(純粋系薄幸少年か。ショタコンの友達が好きそうだな)


 本当に八宝菜の交友関係はどうなっているのか。


「えっと、状況が分からないと不安だよね。僕たちは今、馬車の中にいるよ。薄暗くて……ちょっと怖いな。何も見えない君の方が怖いと思うけど……」


(いや、中身高二だから大丈夫やで)


 高二でも視界が塞がれた状態で体の自由が利かなければ恐怖を感じる。八宝菜の肝が据わりすぎなだけである。


「僕は手足が縛られてて、床に転がされてる。身につけている服以外に何も持ってなくて……ここから脱出はできなそうなんだ」


(スクショできるなら本当にショタコンに売れそうだな……。いや、マリリンに売った方が手堅いか? まぁ目見えないからスクショできんが……)


 危機感がなけりゃ倫理観もない八宝菜であった。このクズを心配している少年が可哀想である。


「ねぇ、まだ着かないみたいだから、僕の話をしても良い?」

「……」


 コクリ、と首を縦に振る。元より、この少年とのやり取りは暇潰しなのだ。


(面白ければ良いな)


 道徳心の欠片もないことを願いながら、少年の話に耳を傾けた。

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