第12話 2001/4


-----------------[短文のコーナー]------------------------------------


過ぎ去りし日々は

まだ来ぬ日々とおんなじで美しい

小さな硝子のかけらのような

氷の粒子が 記憶の中にきらめくよ

ひとつひとつが それぞれに

ちがうひかりを 帯びながら


時がたち

めぐる季節が 往くように

寒い時間は 終止を告げる

破片のような ひとつ ひとつは

溶けてひとつのエネルギィ

やがて来る

水の時代を迎えるために...0


-----------------[長文のコーナー]------------------------------------


[city]







危険をそうは思わない、ような。

攻撃的な瞬間。

振り返った時、自分がとても異常だった、と気付く。

どうしようもない、本能の叫び。

「そいつを、無理やり抑制するから....。」

ヘルメットの中でつぶやく。

生き物としてのヒトは、変化を好む存在なのだ。

思うがままに、原野を駆けまわっていた先祖たちには

こんな悩みはなかtったに違いない。

日々の食い物を得るために、攻撃性を発揮していたのだから。

それから、気の遠くなる程の時間が過ぎ、

ヒトは社会を作り、複雑なルールを決めた。

すべては「共存」のために。

だが、しかし。

それが、ヒトのもつ本質的な攻撃性に強くストレスを与える。

どこかにはけ口を求める。

娯楽に、sexに、嫌がらせ、いじめ。

すべて、歪んだ攻撃性が、行き場をうしなって暴発したものだ。

共存の為の機構が、ヒトの自滅を誘う。

皮肉なものだ....


さまざまの妄想が、脳裏を掛け巡る。

今夜は、眠れそうにない。

少し、軽くながそう、と。僕は深夜の環8を、

5000rpmに押さえて。


ヴァイブレーター・コールにしてあった携帯のことを思い出し、

道端にバイクを止め、バック・ポケットをまさぐる。


左にだしたウインカー、旧タイプの三角のウインカー・レンズの

カット・レンズがオレンジ色の光を放って、すこしまぶしい。


携帯の無機的なモノクローム液晶に、「着信あり。」


Function#24 で、番号を探る。


......横田。


ついさっき。の時刻。


ちょうど、僕が交差点で暴走族ごっこをしていた時刻だ。


...なんだろう。また、酒でも一緒に、ってのかな?



何の気なしに、着信履歴ファイルを開くと、見慣れない番号がそこに。

....誰?

アドレスに書き込んであれば、ネーム表示になるから.....

僕は返信した。

仕事の依頼か、とも思った。




コール。.....1回、2回、3回.....。


長く、コールが続く。


「はい。」

深夜にも、はっきりとした男の声。どうやら眠っていた訳ではないらしい。

どこかで聞き覚えのある、おちついたヴァリトーン。


...この声は?


「お電話頂いたようですが....、先程。」

と僕は、相手をまだ測れずに、一応、丁重に。



「デンワ?.....さあ..? あんた?... ! ああ 、あの時の" 7"の!。」



と、800MHZ の無機的なディジタル無線波は、いきなり有機的な雰囲気を連れてくる。



「おお、あれから大変だったんだよ、俺、変な奴等に捕まってさ。」




思い出した!

この声は、あのS12の、メカ・マニアの彼だ。


「大変だったって?無事だったんだ。失踪した、って刑事がいってたから、

気にしてたんだよ。」と、僕は無事を喜んだ。



「失踪?なんだ、それ?俺は、あれから高速でちょいと、boost圧上げすぎて、

ブローしちまってさ、なぁに、間にあわせだったもんだから、メタル・ガスケット入れなかった

のが間違えだった、はは^^;。」


と、彼は、メカ・マニアらしく、機械の話になると 「「「ジョウゼツ」」」 になる。


「大変だったんだ...。あ、夜遅くに悪かったね...。」

と、僕は返した。


「いやぁ、今、エンジンをスペアに載せ代えてたとこさ、今度は手抜きはなし。

しっかり腰下もやってあるから、絶対ブローなんざしないさ。

270psは軽いだろ、ははは。」


と、彼は明るく笑う。



「.....でも、変な連中って?。」

僕は、気になって、聞いてみる。


「ああ、高速でさ、ブローして路肩に止めてたら、一見警官みたいな

やつが、キャリアカーに載せてく、ってんで頼んだらさ、....ああ、只だってんで、

JAF呼ぶよりいいか、と思って。 そうしたら、変な廃病院みたいなところに

連れこまれて...んで、逃げてきちまった。

連中?ああ、偽警官みたいだ。

なんかエラそうなとこは、本物っぽいけどさ。

なんか....なんとかって言ってたな、自分たちのこと。

...ああ、『特高』とかって。」



....『特高』..!?

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