誕生日


風が吹いていた

まるで他人事だった

お前とは一切、関係ありません

そう告げているようだった

あーそうかよ

ぶん殴ろうとする前に次の場所へと消えた

おれの誕生日ケーキは吹っ飛ばされた

ケーキが丸ごと浮遊しそして散らばったのだ

その風に名前を付けることにした

「アケミなんてのはどうかな?」

お前は苦笑して言った

「確かに恐そうだな………ヤンキータイプのヤリマンだ」

直後、吹っ飛ばされて来た土建屋の看板が頭に突き刺さってお前は死ぬことにした

アケミの怒りに触れた

(アケミを怒らせるなよ………)

残されたおれたちは目配せした

誕生日のケーキは跡形も無くそれを乗せていた台座ももう今はここに無い

突然おれは笑いたくなった

おれたちが直面しているこの現実って何なんだ?

あまりに皆が真面目な顔で突っ立っていたから思わず笑ってしまったのだ

渇いた哀しい笑いだった


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