頭ラケット星人


わたしの十四度目の春

たんぽっぽがモサモサと生い茂りまくり

それ目当てに虫が集まり出していた

空からは頭ラケット星人

正確にはラケットの形に似ているのだ頭が

今年も同じ季節に地球侵略のため性懲りも無くやって来た

「みみみー」

何処が口なのかさっぱりわからない口で発した

わたしたちはトリートメントを施したさらさらの髪で

キューティクル全開でそいつらの頭をかち割っていた

「今が青春ですか?」

「そうですね」

わたしたちの額に伝う汗

初春にしては少し暑い陽気

連中の攻撃方法は柔らかビンタ、ただそれだけ

わたしたちを眼下に発見すると近寄って来てそれをしてくるのだ

ぺたり

ある時、テレビ画面の向こうで頭ラケット星人を研究している高名な博士が言った

「もしかしたら友好的な異星人なのかもしれません、わたしが思うにあれは挨拶のようなものなのではないでしょうか?」

今更それは無いだろう

わたしたちは既に頭ラケット星人を加工して民芸品まで売り出している

彼らの殺害は日常に溶け込んだ

「これからはお互い仲良くすべきです」

暗黒の歴史を無かったことにしようとした

そしてそれを実行した

もちろん教科書にも載らないからわたしたちより下の世代は真実を知る術も無い

「ある時、空から降りて来たラケット星人と一人の少年が抱擁を交わしました」

そのような美談とすり替えられた

アニメ化もされた

そしてわたしたちの共存が始まった

学校にも職場にも頭ラケット星人が紛れ込んだ

彼らの昼食はおいしい水と毛虫


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