椅子


おれは椅子に座っていた

かなり行儀良くな

じっと意識を内側へ集中させた

それを観察していた

おれの心に哀しげな瞳をした少年がいた

「田舎へ帰れ」

試しにそいつに話し掛けてみた

そいつは田舎へ帰った

あの日

白い雲を追い駆け

裸足で何処までも走り回っていた

けれどもうそいつとおれは同一人物ではないのかもしれないな

成長だか退化だかを繰り返し

おれはもう二度とこの椅子から立ち上がることが出来ない予感がしている


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