剥がした


おれは

剥がした

何を剥がしたかは問題ではなかった

では何が問題かというと

今現在、宇宙人が攻めて来ているのだ

「この瞬間にだぞ!」

おれは叫んだ

おれは無職

自宅の部屋で警鐘を鳴らした

だがよく考えたら宇宙人に侵略されても何も問題は無かった

「つーか、寧ろ嬉しいな」

おれを馬鹿にしやがった連中が泣き喚いて胴体から頭を引っこ抜かれたりするのだ

万々歳ではないか

おれは両手を挙げて宇宙人さんを歓迎した

だがやって来た宇宙人さんは温和で友好的だった

「なんだよっ」

すっかりそいつらはこの星に溶け込んだ

今もコンビニのおれの隣りで少年ジャンプを読んでいやがる

おれはつるんつるんのその頭部に向かって唾を吐いた

ぺっ

粘着性の唾液が時間をかけゆっくりゆっくり下る

おれは

剥がした

青春なんて何処にも無いがあったとしても剥がし続けているだろう

何故なら他にやることが無い

この世界の被害者

今日もそこから抜け出せずにいた

「あんた、そんなに剥がしちゃ駄目だよ」

誰かがおれに言った

「何で?」

お前はこの純粋な瞳を直視、出来るのかよ


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