遺産

彼が学生時代、一緒に住んでいた父方の祖父が亡くなった。

晩年は寝たきりで静かに逝った印象だが、それでも泣いた気がする。

供養が済んでしばらくしたある日、母が泣いていたのを覚えている。

悲しくて泣いていたのではない。悔し涙だ。

「なんで最後まで面倒を見た私達じゃなくて、押し付けた義姉や義兄に遺産の多くがいくの!!?」

(ぁー、遺産相続)

当時は子供とはいえ、小学よりは上の彼。

専門的なことは知らずとも、テレビやドラマなどでそれがどんなものか人並みには知っていた。

そんな彼が持っていた素朴な疑問をそのまま言った。


「別にいいんじゃない?爺ちゃんの金でお母さんのじゃないんだから。」


・・今にして思えばこの発言も人情の無さから来たのかも知れない。

まぁ、珍しくその場は収まったので良しとするけど。



余談だが、彼の両親は健在である。

「遺産放棄してでも揉めないようにしよう」と思っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る