【個別版】
第一章 崩れる日常
一人目 〜神谷 光〜
私の名前は
世界人口九割超えの信者数を誇る信仰団体
【幸福信仰団体〝HFG機関〟】のトップ
ごく普通の女子高生である
ここで一言だけ言いたいのだが、私自身が〝あくまで〟普通の女子高生と言い切るのには訳がある
それは昔の事だ
周りからはよく『あなたは祝福され、恵まれて生まれてきた、とてもすごい子なんだよ!』と言われて育った私はとても誇らしく〝特別な人間なのだ〟と浮かれていた
だからだろう
ある日、私はいじめにあったのだ
理由はもちろん明白〝調子に乗りすぎていたから〟
…当たり前である
私自身〝特別な人間〟として周りを見下していたのだから…
しかし私はそのいじめを通して気づいたのだ
周りからの評価は私自身ではなく、父である
結局いじめに関しては、相手側の親御さんがそれに気づき謝罪をして解決した
しかしそれ以降も私の周りが変わる事はなく、沢山の人が媚を売ってくる…
心から仲良くなれたと思った友も、実際は父の権力を狙った親の差金だった…そんなのが日常茶飯事に起こる日々だ
だからだろう、私はそんな関係に嫌気が差していた
そんなある日、私は取り巻きのいる教室でつい
「はぁー、私の周りには誰も味方はいないのよね」
と溢してしまった事があった
それは本当に〝つい〟溢した一言だったのだが…
その発言に対して周りにいた人達は、たちまち私を
それだけではない、周りを蹴落とそうとまでし始める
『なんてひとは醜い人たちなの…』
そう心で何度も思いながら
「フフフ、冗談よ
みんな私の大好きな友達でしょ?」
と心にもない言葉を放つ
すると周りはその言葉を鵜呑みにして一斉に〝そだよね〟〝冗談やめてよヒカリちゃん〟などとまた私の機嫌を取り出すのだった
そんなある日また一人、私に近づいてくる子がいた
彼女の名前は〝
大人しい雰囲気とは裏腹に友達も多い子である
もちろん私はそんな彼女が近く事に、なんの抵抗もしなかった
しかし油断もしなかった
『また取り入ろうとする奴が増えた』
そう思っていたからだ…
しかし実際どうだろうか?
彼女だけは私に取り入ろうとせず、一人のクラスメイトとして接してきたのだ!
最初こそ疑っていた私だったが、彼女のそれが素である事はすぐに分かった
それというのも天然で、ドジで、大人しく、容姿も可愛い彼女が、別に私だけに取り入ろうとする連中と違い〝計算〟や〝打算〟を含まないからだ
しかもクラスの男子からはモテモテで、私の周りにいた女子からも可愛がられていたのが決定打となった
当たり前だが私に取り入ろうとするからには、もちろん派閥がある
だから私の取り巻きたちの間では、必ず特定のグループとしか
しかし彼女にはそれがない…
だから自ずと彼女自身が最低でもどこかの〝取り巻き連中〟と一緒ではない事は確信が持てた
そんな彼女だからだろう
私は彼女とすぐに仲良くなったのだ
今では親友とも言える数少ない〝本当の友〟である
そんな彼女の事を始めて〝
「私の親って、HFG機関トップな訳で、みんな権力狙いで近づいてくるのよね
そのせいで父の拘束もひどいって!
はぁ、本当にあり得ないよね」
と私は彼女に愚痴を溢していた
すると彼女から予想だにしない返事が返って来る
「ふふ、羨ましいね」
そう、そんなふざけた返事だった
彼女は私がそれに〝ない!〟と反論するよりも早く話を進める
「私の親はね、私に〝接し方が分からないの〟と怯えた目で言ってから距離を置く様になっちゃって、私を置いて出ていっちゃったの
ただ生活費だけ振り込んでくれるけど、全く関わりを持とうとはしないのよね…」
そんな悲しげな表情を浮かべながら答えた
私はそれを聞いて咄嗟に
「
ずっと一緒、親友だから私たち!」
と初めて彼女の事を〝
それからは、この会話がきっかけとなり私は、彼女の事を〝
それから仲良くなった
遊ぶ時も学校に行く時も、、、
そんなある日、
「実は、話したい事があるの、、、」
と相談を持ちかけられる
滅多に相談しない
「実はここ最近ずっと視線を感じるの
まるで私の周りを常に見ている様な、得体の知れない視線を、、、」
と言い放つ、私はそれを聞いてすぐに言い返した
「もしかして、いや、もしかしなくても
それって、ストーカーじゃない!」
それを聞いて
「やっぱりそうかな?」
と不安そうに聞き返してくる
それに〝絶対そうだって!〟と言わんばかりに肯定すると
「ならやっぱり…
警察に相談したほうがいいよね、、、」
と言う結論に至り、二人で一緒に警察署に行く事となった
警察署へ着くと私と
それに対して担当してくれた警察官は、とても親身に対応してくれた
しかし結局これと言った形跡が全く出る事がなく、調査は打ち止めになってしまった…
そんな状況が続き、精神的に病んで衰退していく
私はそんな自分が嫌で、彼女の支えになってあげたかった
でも
そんな現実だけがのしかかってきた
だから私は守るための決意を固めて、
私はそのチャンスを活かすためにも、これまでの
少しでも
結局、話を聞いた両親は
しばらくして
父親がコーヒーを専門に扱う職に就いていた事もあり、周囲の評判も良く大繁盛している
心なしか
どうやら知らない間に、両親との仲も良くなった様だった
それと〝憩いのカフェ〟を開いた事で、
お陰で
そんな常連客も増えてきた頃〝憩いのカフェ〟の若い夫婦の常連が、友達のシングルマザーの人を連れて来られた
一緒に来たシングルマザーの人も、ちょくちょく通う様になって、
そんなある日、シングルマザーの人と一緒に一人の少年が来店した所を見かけた
なんでも息子さんらしい
まだ幼いなりとは裏腹に、大人に引けを取らない態度が目立つ子供だった
そんな頃からだったか、また
心配になった私は何度も様子を見に行ったが、日に日にやつれた姿が目立っていった
だから何度も、何度も私は
ある日、私はいつもの様に
〝憩いのカフェ〟に着くと、
私は二階にいる
私は両親が〝なにしてるの!〟と言う注意の言葉を止めた
「もしかしたら、少し疲れてるか、寝てるだけかもしれない」
そう言い終えると私は
カフェから続く階段を登り終えた〝一番奥にある部屋〟へと向かうと、扉の前でノックをしながら
「
そう声をかけて扉を開いた
…次の瞬間わたしの溝辺りに冷たい感触と、温かい何かが出て来るのを感じる
ゆっくりとその部分を見ると、ちょうど溝より少し下に位置する横腹に銀色に光る包丁があった
そこからドロドロと流れる自分の血液を見ながら、私はその場に倒れ込む様に崩れ落ちる
刺された包丁の傷口から流れる血が、自分の腕や顔に感じられる頃、勢いよく刺さった包丁を引き抜かれる
私はぼやける視界の中で
そこで私の意識は無くなった…
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