第47話 ギラギラ・ウルフ19

「そうか、特別に教えてやるよ。オレは紛れもなくこの星に生きる者だ。だが、普通の人間ではない。オレはこの世に生を受けた瞬間から今日までずっと、天使てんしの意思を受け継ぐべく、常人離れした特訓を受けてきた。その程度の光線なんぞ、赤ん坊の頃に克服済みなんだよ」


 タカは、ありもしないタロウとの特訓の日々を脳裏に浮かべながら、自信に満ちていた。


 するとトロッコは、「オマエ、なぜ、タロウ様を知っている」と声を震わせながら、おびえるようにして言った。


 タカは、トロッコの口からタロウの名前が出てきたことに驚き、目をキョロキョロさせて、視線も感情も定まらずにいた。


「タロウ様って、いがぐり頭のガキのことを言っているのか?」


「タロウ様に向かってその口の聞き方、オッ、オマエはいったい何者だ?」


「……タロウから奥義を受け継いだ者に向かってオマエ呼ばわりするとわぁ、トロッコさんの国のトップは、どういった教育をしとるんじゃ!」


 タカは今、自分のすごさに心酔しんすいしている。


 実はタカがトロッコの必殺技を受けてもなんともなかったのには、彼が着ているハッピに秘密があった。


 しかし、この中に居る者誰一人として、その事実を知らない。


 トロッコは怯えたような口振りで、「そっ、それは」と慌てふためいている様子であった。


「おまえ達にとって、タロウはどういった存在なんだ? オレとタロウとの関係はそれを聞いてからだ」


「わっ、分かったから、何もしないでくれ」


「あぁ、正直に話せばな」


「分かった、正直に話そう……タロウ様は、我々アルガル国の国王様とその部下たちを救ってくれた恩人おんじんなのだ」


「恩人?」


「そうだ。国王様と我々部下たちは、別の地球からこの地球へとやってきたのだ」


「別の地球?」


 タカは思わず、前のめりになりながらトロッコに歩み寄ろうとすると、トロッコは「まっ、待て、話が違うぞ」と前方が扉のように開くと、陸を降ろしてたてのようにして後ずさりをした。


「待てって。絶対に手を出したりはしないから、話を聞かせてくれ」


「ほっ、本当だな?」


「あぁ、約束するよ――それで、アルガル国の国王が別の地球から来たって、どういうことなんだい?」


 タカはトロッコが逃げ出したりしないよう、丁重ていちょうな言葉づかいで尋ねた。


「……正確に言うと国王様と我々部下たちは、別の次元にある地球から、この次元の地球へとワープしてきたのだ」


「ワープしてきた?」


「そうだ、国王様と我々部下たちは、『ム・テキ』と名乗る者との戦いで追い詰められ、いよいよ全滅かという所でタロウ様に助けられ、この次元の地球へとワープしてきたのだ」




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