第14話 覆面を被らない謎のファミリー2
するとその直後、真上の方向から拳銃の発砲音のような音が鳴り響いた。
「ちっ、違うんです!」
タカは反射的に頭を抱え込むようにして、両手を後頭部にまわしてその場にうずくまり、叫ぶようにして懇願した。
少しして我に返ると、意識的に体に痛みがないことを確認し、大丈夫だと判断するとその場に立ち上がった。
念のため、手の平で体のあちこちをベタベタと触って血が出ていないかを確かめたが、手の平は赤くなく安堵の息を吐いた。
「……空耳だって、疲れてるし」
タカは自分に言い聞かせるようにそう呟くと、恐る恐る、再びインターホンのボタンを押した。
その結果――。
「もう、なんなんだよ!」
タカがボタンを押したのとほぼ同時に、再び、真上付近から銃声音のような音が聞こえてきた。
タカは、こうなることはある程度予想をしていたので、今度はなめるなよとばかりに、マウンテンゴリラがドラミングをするかのように、拳で胸を叩いてハートを
そして、血が出ていないか確認のルーティーン。
何事もないことに安心すると、途端に怒りが込み上げてきて、再び玄関ドアの前に立つと、今度は叩くようにしてインターホンのボタンを連打した。
するとボタンを押すのとほぼ同じタイミングで、真上の方から拳銃の発砲音のような音が鳴り響いている。
タカはボタンを連打し続けながら、顔を音の出所に向けて目視した。
そしてからくりが分かると、大好きなファンタジーコミックスが、同じ日にニ巻連続で発売しているのを発見したかのように、その部分にくぎづけになった。
仕組みは単純で、ボタンを押すタイミングに合わせて天井のコンクリートの一部分が開閉して、そこに埋め込み型のスピーカーが設置されており、音の出どころになっているというものである。
タカは普通とはいえないこの状況に気味の悪さを感じ、インターホンのボタンを押すのをやめて、思わず後ずさりをしはじめた。
三歩、四歩、五歩目の歩を戻した時、急に膝の力が抜けてその場に倒れ込みそうになった。
「うぇっ?」
倒れ込もうとするタカを後ろから誰かが支え、その場に崩れ落ちずにすんだ。
タカは、瞬時に自分を支えている人物がこの家の住人だと悟ると、恐る恐るゆっくりと、無言で後ろを振り返った。
「……」
そこには、メガネを掛けた三十代後半ぐらいの男性の顔があった。
その体勢でお互いに目を合わせたまま、しばしの沈黙が流れた。
「四郎さん、この方は誰なの?」
くこちらに近づいてきていた複数の足音がほぼ同時にやむと、この家の奥さんで京子だと思われる人物が、四郎に向かってそう尋ねた。
「後ろからヒザカックンをしたらこんな格好になっちゃって、どうしたらいいか分からないでいるところなんだ」
四郎がそう言うと、京子は手に持っているハンドバッグの中から、ロープのような物を取り出して無言で四郎に手渡した。
それを見たタカは、人質、首つりといったよからぬことを連想してしまい、血の気が引いていく。
すると四郎は、「痛い思いをしたくなかったら、少しの間、おとなしくしているんだよ」と言って、タカと絡み付くようにしていた体からはなれた。
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