聖女な私が現代社会で頑張ってみた
TB
第1話 ソフィアとさやか
あれ? ここってどこだろう。
私の目の前には、とても背の高い建物が立ち並び、馬も居ないのに凄い速度で走る馬車の様な物。
そして奇抜な服装をした大量の人々が、
◇◆◇◆
私の記憶の中では……
王都の教会で魔王軍の侵攻により、大量のけがをした人々を必死で治療をしていた時に……
魔王に操られたエンシェントドラゴンが教会を襲い、灼熱のブレスを吐き掛けて来た。
私を含めて教会に居た人々はきっと、骨も残す事なく焼きつくされてしまった事だろう。
ただ……
女神様にいただいた
そして今この状況だ。
私は、聖女ソフィア。
アストラーゼ聖教国の教会に仕える、敬虔なる神の使途。
女神アストラーゼ様の祝福を受け、聖魔法、錬金術、魔法薬学を極めて日々聖教国の民の為に、治療を行い、亡者や悪霊を浄化しながら過ごして来た。
ここは何処なの?
そう思ってる私に、もう一つの記憶が重なって来た……
◇◆◇◆
頭が痛い…… 割れそうになる程に……
私は…… 遠藤さやか。
都内の女子高に通う17歳の高校二年生。
両親は私の二つ上の兄と共に二年前に、交通事故で他界した。
残されたのは、都内のマンションと生命保険。
両親ともに祖父母は既に亡くなっており、親戚の伯父さんや叔母さんが、残された財産を狙って私の後見人になるとか言い出して醜い争いをした。
私が家族と住んでいたマンションは、都内の一等地にある高層マンションで、その当時で1億円程度の価値があったそうだ。
親戚の伯父さん達はそのマンションを売り払って、現金は私が成人するまで預かって月々の生活費を贅沢にならない範囲で渡してくれると言って来た。
他にも、生命保険の受取で未成年で中学生の私では保険金の請求をする事が出来ないから替りにしておくと言って、3人分で2億円ほどの生命保険金を受け取ったはずだが、その受け取りをした通帳も私は一度も見ていない。
かと言って、伯父さんや叔母さんの家族として一緒に生活する訳でもなく、伯父さんの家の比較的近い場所にある賃貸アパートに一人で住まわされて、月々の生活費と学費として10万円ほどを受け取る生活をしていた。
都内で一人暮らしをしながら、水道光熱費や最低限のスマホ料金などを払うと毎日三食をきちんと食べるのも厳しいくらいだ。
なんで私が我慢しながら暮らしているのに、伯父や叔母の家では家のリフォームをしたり、新車に買い替えたり出来ているんだろう? どちらの家も両親が生きてる頃には、良く借金の申し込みをしに来てた筈なのに……
当然余裕は無いから、友達と遊びに行ったりすることも出来なくて、クラスの中でも孤立している。
洋服だって制服以外はもうサイズも会わなくなってきたような、中学生時代から着ている服しか無い。
下着だって、100均で買ってるくらいだよ。
段々家から出る事も、学校に行く事も嫌になっていた。
(お父さん。お母さん。お兄ちゃん。何で私だけ置いて行ったの? 私が今死んだらちゃんと迎えに来てくれるのかな?)
そう思ったら急に気分が楽になって、久しぶりに出かけてみた。
向かった先は、代々木公園にほど近い場所にある高層マンション。
そう、私が両親とともに住んでいたマンションだ。
このマンションはオートロックだけど、私がまだ持っていた合鍵で共有部分には入れた。
きっと住んでた部屋は鍵が交換してあるだろうけどね……
屋上はこのマンションの住人であれば鍵を使って出入りできる空中庭園になってるんだ。
私はこの庭園からの眺めが大好きだった。
そして誰も居ない事を確認した私は、柵を乗り越えて大きく一歩を踏み出した。
(みんな。遅れてごめんなさい。今から行くからちゃんと迎えに来てね)
そこで記憶は途切れ意識は混濁した。
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