第27(虚しい)一年間姑にいびられて嫁が家を出て行く……みたいなものか?
別に、うちのお嫁さんが出て行ったわけではありませんよ!
他県にいる弟の長男。保育園児が、とうとう第六波にしてコロナに感染し、家族みんなで部屋に缶詰めになるも、zoomを使ってゲームしたいと元気いっぱいなので、安心して良いのかよくないのか良く解からない状況だったりしますが。
ええ。
チーフの話です。
新年早々に、「去年は色々ありましたが、去年のことは綺麗さっぱり忘れて、心機一転頑張りましょう」
とのたまったチーフの話です。
この方、有言実行したのか、年が変わっても同じことを繰り返す。
他愛もないことです。
メモはちゃんと書いてと言っても、言葉が足りなさすぎる。
メモを取るなら、受けた日付と、相手の名前と、連絡先と、 用件と、いつ来るのかを書かないと意味がないと何度言っても、用件しか書かない。
伝言はろくにできない。
失敗したことや怒られそうなことは子供のように誤魔化したり隠したりする。
しかもすぐにばれるのに。
それを止めろと言い続けたのに止めない。
物事軽く考えすぎだから、やる前に確認取ってと言っても確認をしない。
分からないことがあったらちゃんと聞いてと言っても聞かない。
出来ないことがるなら練習してと言ってもしない。
そんなチーフが先日やらかしました。
ちゃんとしたお店なら、不正行為もいいことを堂々と。
それが発覚したのは夜のこと。
チーフがやらかしたのは朝一のこと。
たまたま、夜に朝からいたサブチーフがいたから、「あ、もしかしたらチーフかも」
の一言でレジの履歴を調べたら、確かにチーフだった。
速攻で電話をして、なにしてんの? と問い質す。
もう、呆れ果てて頭に来て、話を聞きました。
その口調があまりにも反省の色がない。
呆れ果てて電話を切った次の日。
私が出勤すると、チーフがやって来て謝りました。
なので私は訊きました。
『一体何が悪かったか分かる?』
問いに対して答えるチーフ。
それを聞いて、(ああ、やっぱりこの人は事の重大さを理解できないし、こっちの言ってる意味を正しく理解できていなかったんだ)と理解しました。
私、言いました。
「あのさ。自分が不正行為したって自覚ある?」
その瞬間固まるチーフ。
私、淡々と説明しました。
前日の夜には、激昂した私が何を口走るか分からないと、自分が怖いと恐れる私を、他の面々が落ち着け! 落ち着くんだ! 推しを思い浮かべて! と、良く解からないことを口にして宥めてくれていたのですが、思いのほか淡々としておりました。
「だからさ。簡単に物事やるなって言ってるでしょ? 去年からずっと繰り返し繰り返し、言ってるでしょ? なんでおかしいと思った時点で聞かないの? 売上上げたかどうかなんて調べる方法いくらでもあるのに、チーフが知らないだけで、こっちは知ってるんだよ? 何で勝手にやったの? そのせいで昨日の夜どれだけ大変だったか分かる? 何がそんなにこっちに聞けないの? よりにもよって、レジのチーフが一番やっちゃいけないことだよ? お金に携わる人間がやっちゃいけないこと。そんなことしたら一回で信用失うことしたんだよ?
あのさ、チーフさ。一年見て来た私たちの共通認識だけど、誤魔化す癖あるよね?」
と言ったら顔が強張るチーフ。
「怒られそうなこと、失敗したこと。そういうのバレないように勝手にやって、その度にばれて怒られるの繰り返してるよね?
私たち分からないんだけど、なんでそうなの? そんなに難しいこと言ってる?」
と言ったら、チーフ言いました。
「言い訳かもしれないけど、橘さんたちには簡単だろうけど、私には難しいことばかりだったの。何も知らないのにいきなりサービスカウンターに入れられて、チーフやれって言われて。私なりに頑張ったけど、出来なくて、それが自分を打ちのめして。橘さんい言われるたびにいつも苦しくて」
「あっそ。じゃあ、注意して怒ってる私が悪かったんだ。
って言うか、私何を難しいこと言った? 毎日毎日細々言ったかもしれないけど、要約すれば単に「報連相」やってって言ってただけだよ? 他から聞いたことは共有しろ。連絡事項があるならちゃんと皆に提示して。分からないことはちゃんと聞いて。それの何が難しいの? それをちゃんと自分でやったって心から言えるの? 自分だけで受けたことを、メモも残さずにどこかに行って、その間にお客さんが来たことどれだけある? その度にちゃんとメモ残してって言ってるのに残さないの誰? 「私がいつもここにいるから」って言っておきながら、こっちがメモ残してるお客様来ても、メモ見てないせいで二度手間かけたり、いるからと思って、これ何かと聞けば、私判らないって返して来るくせに、どうしてそういうことを堂々と言えるのか私らにはむしろ分からないんだけど?
それに、何もできないのが分かっているから、今のうちに練習してって言っても、包装の練習するわけでもなければ、のし作る練習するわけでもなかったよね? 見てれば解かるって言って手を出すこともないし、メモを取ればそれで終わり。結局はこっちに任せるよね? 任せるのは良いけど、暇な時間に練習したらどうなの? 練習したらした分上手くなるのが包装だよ?
あのさ。言っちゃあなんですけど、チーフを受けたのは自分だよ? 受けない選択肢あったのに、受けると決めたのは自分。それなのに、前任のチーフにチーフの仕事のこと何一つ聞かなかったのも自分。分からないことを解からないままにして、練習もせずに「出来ない」って、甘えもいいところだよ。
私らだって、初めからこうだったわけじゃないでしょ。何もできないことは知ってるし分かってるから、「ちゃんと今のうちに聞いておいて」「これはこうだから、こうしてね」「これはこうだからやらないでね」って忠告していたのに、前任者には訊かない。やってと頼んだことはやらない。やるなということはやる。子供か?
出来ないはずなのに相談してこないからどうなるかと思ってれば、何でそうなるってことばっかりしてるから、結局喋られるんでしょ?
そうやって、自分でいろいろ問題起こしておいて、同僚に対しては上から目線で偉そうに喋るのは何なの? 無自覚なの?」
すると、チーフの口から爆弾発言。
『だから私言ったの」
「なにを」
「社長に、私はチーフに向いていないのでおろしてください。でも、レジには残してくださいって」
………………………
………………………………
………………………………………
お判りいただけるだろうか、この瞬間の私の気持ち。
社会人としての基本の「報連相」が出来て居なくて毎度注意しても直すこともなく。
包装やのし作りの練習をすることもなく。
自分が楽なシフトばかりを作り、そのせいで連勤続きになる人がいるからそこちゃんと見ないとだめだよと注意しても、やっとシフト埋めたのにと不満顔。
人がそれぞれだということは分かっています。
でも、誰もが出来ない仕事を覚えるとき、どうやってやるのかを聞くと思います。
その上で分からないことがあれば、更に聞いて勉強します。
やらないといけないと腹を括れば、練習に付き合ってほしいと口にします。
私がサービスカウンターに入ったのは就職して半年。
当時のチーフたちは、お気に入りの子と入っている時はテンション高いですが、そうじゃないと総スカンを喰らいます。空気が変わります。
簡単なことは、一度教えたら「解らなくなったら前の日の見て。同じだから」と言って、同じことを教えてはくれません。包装は別な人が指導してくれましたが、応用になると見て覚える必要がありました。
そうです。一から十まで丁寧に教えてくれる環境になかったんです。
嫌な思いも辛い思いも沢山しました。
でも、仕事が出来ないのは事実なので仕方ないと思いつつ、二度と同じことをして叱られて堪るかと、努力して努力して、結果、いろいろできるようになったのです。
自分以外が怒られている時は、同じことはしないようにしようと思うし、自分で対処できない問題の解決方法を隣で見て覚えたし。
包装だって、ティッシュの箱を包むのに、初めは十分もかかっていました。
何でそんなに時間かかるのかと、仕事終わって家について、何度も何度も時計見ながら格闘して。
もう一人のサブチーフも同じです。むしろ、このサブチーフもあるとき突然サービスカウンターに入れられて、悪戦苦闘しながら、足を引っ張らないために何を今出来ればいいのかと、一生懸命勉強して、頑張ってお覚えてくれました。
暇な時間には、この包み方教えてと、瓶を持って来て何度も練習。ここをどうすればいいのかと言うから、こういう時はこうすればいいよ。と教えて、自分の知らない作業を私がしていれば、『それ何?』と言って、メモ片手に作業内容書き留めて、疑問に思ったこと質問して。
そうやって、出来ないながらも出来ることを増やそうとして頑張って来てくれていました。
私はそれが、『普通』のことだと思っていました。
出来ないことが分かっているから、出来ることから確実に覚えて行く。注意をされたことには注意して、同じこと言われないようにする。そうやって仕事は覚えて行くものだと。ただ、私の時はあまりにも放任主義だったため、マニュアルのようなものも作って説明したりしましたが、そのマニュアルを見えるとこに置いておいてもまったく見なかったチーフ。お客様が来て初めて、「これどうやるの?(にっこり←お客さんの前での誤魔化し笑い)」私は常に殺意に近い怒りを抱いておりました。
二か月も前にマニュアルずっとここに置いておいたのに、何で読んでないの? 言っておくけれど、解らないことあったら聞いてって何度もこれも言ってるのに、聞きもしなかったのチーフだよね? これ、チーフの仕事じゃなくて、サービスカウンターにいる人は必ず覚えないといけないことだよ? しかも、これ二か月前から始まったことだから、私たちだって前からやってたことじゃないから、説明もしたのに、他の人が質問してる中、見向きもせずに知らない振り決め込んでたの自分だからね。余裕だなァって思ってたら、はじめっから自分に関係ないって態度だったんだね。と言えば、「ごめんなさぁい。肝に銘じます」と鼻に掛かった声で謝罪と言う薄っぺらい答えばかりが返って来て、反省の色もなければ、変わる様子もない。
その様を、全部門の人たちも見ているのです。やってと促してもやらず、信用を失うことを繰り返し、このままでは前任者と同じで皆から総スカン喰らうからと、これをやっちゃだめ。それやっちゃだめ。それやるならこうしないとだめと、この一年、何度同じことを口にしただろうかと。
そりゃあ、自分の子供と同じ年の人間から、人生で一度もいびられたことのないまさに箱入り娘(これ、チーフ自身が口にしておりましたから、本当にそうみたいです)。そんな人からしてみれば、私は人生で初の「嫁をいびる姑」状態だったんでしょう。
自分の至らないところを直すのではなく、降りるという選択をしたチーフ。
思わず私言ってしまいました。
「…………ほんと、逃げられる人は羨ましいよね」
「逃げ、うん。逃げなのかもしれない」
「うん。羨ましいよ。変わる努力もせずに、出来るようになる努力もせずに、私には出来ないやれない難しい。だから辞めるって言って、楽な場所にだけいられる人たちは羨ましい。楽なところから好き勝手に言ってる連中は楽でいいよ、ほんと。
うん。これはただの嫉妬だよ。そうやって、どっかの誰かが辛いから嫌。って逃げた結果、全部私に回って来た。出来ないって言ってられないから私はやれるようになろうって努力した。分からないことは分かる人捕まえて勉強した。それを、初めから出来る人は良いかもしれないけどなんて言葉で片付けられるのが、一番の侮辱だし、心の底から気に入らない一言だわ。
でも、いいや。そっか。この一年半。あれこれ忠告……には聞こえなかったってことは、ただの嫌味か。嫌み聞かせてごめんね。いつ降りられるか分からないけど、それまでもう少し頑張って、もう、本当に何も後は言う気も失せたわ」
そして一日仕事をして、今日。
続けていくなら直してほしくて色々言ってたのですが、なんだ、下りる算段を付けているなら、教えるだけ無駄だし、だから聞く気もないのかと分かったら、ストンと胸のつっかえが消えました。
ええ。このエピソードも、立場が立場なら、色々思うことがあるということは百も承知です。
練習したって出来ないことはある。という主張も分かります。
でもそれは、本気で練習した人しか言えないセリフです。
包装は、やれば誰でもそこそこにはできるものです。時間は掛かっても出来ないわけではないのです。
出来ない仕事をやれとはこっちも言いません。
それでも、最低限出来なければならないものと言うものがある以上、出来るようになる努力はしてもらわないと困るのです。
綺麗ごとだけで物事が回るわけではありません。
被害者ぶる前に、本当に自分はやれることをやったのか、もう一度見つめ直してほしいし、嫌味で言っていると思っても、一理あると思えば考える必要もあると思うのです。少なくとも私はそうして学んできました。
そうです。これはあくまで私ごと。私がこうして来たってだけの話で、チーフはただの被害者なんです。そのしわ寄せが果たしてどこに行くのか。
見る人が見れば、姑が嫁をいびり出したぜ。と見えるんだろうなぁと思いながら。
本日早番だってことをすっかり忘れておりました。書いている場合ではなかった。
行ってきます。
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