第5話

「兄様! 溫井さん、困ってますよ」


 キャラ崩壊してる雪野マフユに混乱していると雪野さんが割って入ってくれた。


「ああ、すまない。いや、こんな綺麗な人だったなんて驚いてしまってね」


「は、はあ・・・・・・」


 本当にコイツ、こんなキャラだったけ???

 初対面の女を綺麗とか言うキャラじゃないでしょ!?

 どうしちゃったの!?


「こら!! アタクシ達を置いて盛り上がらないでください!!」


 混乱してたらマスゴ・・・・・・、桝ココミが割って入ってきた。

 桝ココミの後ろには申し訳なさそうに佇んでる月下カイが居る。

 この二人、もう解放されて家に帰ったと思ってたけど居たんだ。


「ん? なんだ、君達はまだ居たのか。見逃すから帰って良いって言った筈なんだが・・・・・・」


 雪野マフユは桝ココミに対して冷たい視線を向ける。

 さすがの桝ココミもビビってる、イケメンの絶対零度の視線は怖いよね~。


「取材対象の二人がこれからバトルするというのに帰るわけないじゃないですか!! こんな所で突っ立ってないで早くバトルを始めなさい!!」


 そういや、アタシが呼ばれた理由はバトルすることだった。

 乗り気しないけどしないと約一名が凄く五月蠅い事になりそう・・・・・・。

 ライバルとのバトル、こんなん主人公じゃん。

 これはもう主人公として生まれたからには主人公ルートは回避できない運命って事なんですかね!?


「バトルね・・・・・・、そのつもりだったけど、溫井さん、君はまだ初心者とハナから聞いたんだが」


「はい、今年の三月の終わり頃から始めたばかりで・・・・・・」


「そうか、初心者か」


 あれ? 雪野マフユが考え込んじゃったぞ?

 アタシとバトルしたいんじゃなかったっけ?

 もしかして初心者だから萎えたとか?

 それなら非常にありがたいのでバトルは取りやめの方でお願いしたい。


「さすがに初心者である溫井さんにバトルを挑むのは気が引けるな。溫井さん、バトルではなくロボ競技で試合をしないかい?」


 ロボ競技?

 なんですかそれ?

 そんなの原作にも出てない単語が飛び出してきてアタシはただキョトンとするしかない。

 でも競技って事はスポーツみたいな事をするのかな?


「その様子だと知らないみたいだね。まあ、ここ、日本ではバトルばかり注目されるからね、海外、アメリカを中心に行われているんだ。

 簡単に説明するとテノヒラロボで行うスポーツだ」


 ほえ~、知らんかった。

 テノヒラロボはバトルだけじゃないって事か。

 よくよく考えれば男主人公が女のまま転生してる時点で原作と違ってるんだから原作にはないものがあっても可笑しくないか。


「叔父様、此処のロボセンターに勤める江良博士はロボ競技にも強い関心を持っていてね。態々、アメリカから購入した競技用フィールドとスキルをこのセンターに設置してるんだ。

 ロボ競技ならやったことはあるけど数える程度だ、初心者と変わらない、どうかな?」


 う~ん、ロボ競技か。

 ライバル対決するのは変わらないけど・・・・・・。


「うん、やる。アタシ、凄く興味ある、一度で良いからロボ競技やってみたい」


 そう答えると雪野マフユは良い笑顔で笑う。

 うっ! イケメンの笑顔! 凄い破壊力だ!!


 正直言うと今の時点でバトルはスキルが揃ってないし育ってないのもあって乗り気しない、だけど、雪野マフユが自分の口からロボ競技は初心者だって言ってたしワンチャン勝てるかもしれない。

 誰だって負けるの嫌じゃん? 卑怯? ええ、卑怯野郎ですけどなにか?

 だけど、興味があるってのは嘘じゃない。

 アタシの中ではテノヒラロボ=バトルしかなかったから、テノヒラロボで行うスポーツに凄く興味がある。

 一度体験するのは良いことかもしれない、そう思ったのだ。


「それなら、競技フィールドがある場所へ行こう、案内するよ。

そうだ、ボクの事は下の名前で呼んでくれないかい?」


「え・・・・・・?」


「ほら、ボクとハナは兄妹だしね! その方が良いだろう!」


「あ、うん、そうですね、解りやすいですよね」


 本当にコイツ、初対面の女に名前を呼ばせるキャラだったけ?

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