第22話 浅慮、ジークレイ・エラージュの放逐
城にアニーを招待した日、彼女の帰り際に我が側妃候補となる事を考えてくれるなら、姉の処分を取り消すと伝えた。
男爵家の娘が王太子の側妃となれるのだ。
これ以上の名誉はないはずだ。
しかし彼女は顔色一つ変えずに、むしろ不快げに顔を顰めて何の返事もなく去って行った。
王族相手に無礼な振る舞いだとは思ったが、きっと突然のことに彼女も戸惑っていたのだ。
だがすぐに色良い返事が聞けるだろう。
他国との友好関係を結ぶにあたって、政略結婚も重要な手段の一つだ。
ああ、そうだ。
側妃として迎え入れる条件を、彼女の家に送るとしよう。
きっと男爵家は、娘の名誉ある役目を、泣いて喜ぶことだろう。
条件を記した親書をその日のうちに送り終えた。
また近いうちにアニーを城に招待しようと思ったが、翌日、王都を騒がす出来事があった。
突如として王都に黒い何かが現れて、そしてあっと言う間にアニー嬢を連れ去っていたのだ。
しかも、一人の年若い男が彼女を抱き寄せ、仲睦まじい様子であの乗り物らしきものに乗り込んでいた。
あの男は一体……
二人はどんな関係なのか、俺の求婚の直後に、見せつけるようにあんな場面に出くわせば、コケにされたような気分になる。
苛立たしげに机に座ると、さらに、神経を逆撫でることは続いた。
その日の夕刻。
弟が騒々しく執務室に訪れたかと思うと、感情に任せて何かを言っている。
大した問題でもないに、王族たるもの、そんなに感情を露わにするものではない。
みっともないと、弟の顔を眺めていた。
最後にエリオットが吐き捨てるように言ったことには、腹立つものもあったが、伝えられた通りに父上の元に向かった。
そこで俺に宣告されたものは、信じ難いものだった。
「父上、何故俺が、王族籍を剥奪された上に、労働者として帝国の属国などに送られなければならないのです」
「その理由を貴様が理解していないことがすでに問題なのだ。もうこれ以上、私がお前を庇い立てすることはできぬ。決定に従え」
「第一王子の俺が廃籍などになれば、この国はどうなるのです」
「エリオットがいる。なんの問題にもならん」
「なっ、俺は、何の期待もされていなかったと言うことですか!?」
「チャンスはいくらでも与えていた。それに応えることができなかった、貴様の責任だ。もう、連れて行け」
父が話は終わりだとばかりにそう命じれば、周囲にいた騎士はすぐ様俺を拘束し、待機させていた古い馬車に乗せられていた。
腕を縛られ、目隠しをされ、長時間荷台の床板の上で揺らされるだけの時間は、何故こんなことになったのかと、ずっとそればかり考えていた。
俺は第一王子で、生まれた時から国王となることは約束されていたはずなのに、何故なのだと………
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