第14話 薬師見習い、アニー・ロッソの嘆息
姉が国外追放された翌日。
姉を退学処分にした張本人に、城まで呼び出されていた。
今度は私に何をするつもりなのかと思っていると、王子から言われた事は思い上がりも甚だしいものだった。
最低限の礼儀として、溜息を我慢していただけで、目が合うと感情が爆発しそうだったから、逸らし続けることで耐えていた。
この人とは、話にならない。
エリオット様の帰りを待ち、今日のところは大人しく引き下がるしかない。
バイス王国には、機械工学の技術提供をする代わりに、医学・薬学の知識を提供してもらうことになっていた。
私達の両親が命を落とした病の治療薬を、バイスが開発したからだ。
両親が患った灰咳病は、数年に一度猛威を振るい、私達の国を悩ませている。
流行するたびに多くの死者をだしていた。
バイス王国は、閉鎖的なせいで機械技術は全くと言っていいほど普及していないが、その代わりに、芸術文化や医学に秀でている部分もあり、お互いに学び合えるものがある。
その先遣として、まずは私達姉妹がこの国に訪れたのだ。
留学生活や基礎教科に慣れた二学期から、第二王子殿下が手配してくれた講師に、直接私が薬学の教えを受けることになっていた。
私もお姉様も、バイス王国と長く付き合うつもりで、だからお姉様が技術者として、私の為にもわざわざ一緒に来てくれて、そして、長く滞在するつもりでいた。
それもこれも、大好きなエリュドラン王国の為だ。
第二王子であるエリオット様が仰っていた、人の話を聞かない兄妹に頭を悩ませていると嘆いていた事を、身をもって思い知ったところだった。
君達姉妹が羨ましいとも仰っていた。
どれだけ御本人が努力をしても、兄妹に足を引っ張られるのであればどうしようもない。
私は、家族や、周囲の人達に恵まれていると、それも痛感したことの一つだった。
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