8.











巻き戻って進んでいく主人公の後ろに、そこに無かったはずの建物や人々が急に目の前に現れた。



気の弱そうなスーツを着て倒れている少年に主人公が近づいて剣を突き刺した。




主人公が力いっぱい剣を引き抜くと、それに吸い付くように少年が起き上がった。




「あ、貴方は一体誰なんです?」


「俺は主人公」


「主人公?貴方はどうやってここに辿り着いたんです?」


「読み手が物語を進めたからだ」


「は?はあ?手に持っているのは剣ですか?」


「ああ」


「あの、じゃあ……えっと、失敗作を削除してくれるっていうのは貴方なんですか?」


「いや、失敗作を産んだ親を削除する事が俺の目的だ」


「その方なら2つ先に居ますよ」




再び主人公は巻き戻って進み始めた。


「君がいる限り、俺は必ずその場所へと辿り着く」


遠く離れていく建物と人々は主人公とは違い、鮮やかで情け無く、疲れ果てた色に染められていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る