第3話

 3月×日



 グレゴリオ聖歌を聴いている。

いまだにあの古めかしいCDプレーヤーで部屋中に響き渡るようにガンガンかけている。


 隣の部屋の住人がたまに壁を叩いてくる。

たまにため息をついている音も聴こえる。あたしの独り言がうるさいとか文句を言う声が聞こえる。

 どうしたらいいのだろう?


 壁一面にあたしの描いた絵を飾りたい。

赤や青や色とりどりに飾った綺麗な壁にしたい。でも納得のいく絵がまだ2枚しか描けていない。これでは無理だ。


 グレゴリオ聖歌の次はオペラのカルメンを聴いた。隣の部屋の住人が馬鹿じゃないのかとか文句を言っている。意味がわからないので無視した。

 マリアカラスのハバネラはたしかに妖艶なのになぜそれが理解できない?


 また誰かいま隣の住人が壁を叩いた。

 

 そろそろ叩き返してもいいのではないか。そんな気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る