第5話 不幸な少女は残念になる

 ソフィアに助けられてからというもの、ソフィーはソフィアにベッタリと張り付き、どこへ行くにも一緒に居るようになっていた。


 呼び方も「ソフィア様」からいつの間にか「お姉様」に変わっていたが、ソフィアとしては実害もないので放置していた。


 なんでこんなに懐かれたのか不思議ではあったが、無自覚にタラシ込んでいたとは思いもよらず、頭の中は相変わらずカップリングで一杯であった。


 そんな2人をアレクは微笑ましく見守っていた。


 なにせソフィアはその特殊な性癖のせいで、女友達が1人もおらず、お茶会等にもほとんど参加しないので、知り合いもほとんど居ない状態だったのだ。


 アレクとしても心配で何とかしなければと思っていた所だったので、ソフィーが仲良くしてくれているのが自分のことのように嬉しかった。


 ただ何故かソフィアのことを「お姉様」と呼んでいたり、アレクが近付くと威嚇するように睨み付けてくるのが気にはなっていたが...


 そんな状況が面白くないのは虐メンで、公爵令嬢であるソフィアが常に一緒に居るため、物理的な攻撃はおろか嫌味一つ言うことも出来ず、ただ忌々しげに睨み付けることしか出来なかった。



◇◇◇



 その日、ソフィーは生徒会の仕事で帰りが遅くなってしまった。急いで帰ろうとしたところを、運悪くは虐メンに捕まってしまった。残念なことに今、ソフィアは側にいない。


 ソフィーを虐められなくなってストレスが溜まっていた虐メンは、嫌がるソフィーを引き摺るようにして校舎裏まで連れて来た。


 絶対絶命のソフィー。このままストレスの捌け口にされてしまうのか...



 一方その頃、ソフィアは校舎を巡回していた。理由はもちろん、新しいカップリングのネタを探すためである。本当に残念...


 するとグラウンドの方から何やら賑やかな声が聞こえて来た。どうやら男子生徒が剣術の稽古をしているようだ。目を凝らして見る。


 動く度に舞い散る汗、風に靡く艶やかな髪、剣を振るう度に躍動する筋肉、どれを取っても尊かった。もっと近くで見ようと窓に近付く。だが今居るここは3階、近付くにも限度がある。普通ならそこで階段を駆け下り、グラウンドに向かうだろうが、残念なことにソフィアは普通じゃなかった。


 窓から飛び降りた。


 ズウーーーンっ!


 3階から飛び降りたソフィアは、奇しくも今まさにソフィーに襲い掛からんとする虐メンの目の前に着地していた。ちなみに無傷である。カップリングのことを考えている時のソフィアは身体能力が飛躍的に向上するのだ。そして虐メンに向かって一言、


「邪魔よっ!」


 それだけで虐メンは全員が腰砕けになり、座り込んでしまった。ソフィアはそんな虐メンを一瞥することなくグラウンドに走って行った。


 その隙にソフィーはスタコラサッサと素早く逃げ出していた。


「お姉様~!」


 と叫びながら。

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