追放された初級職【アイテム師】が自分の居場所を見つけるまで
真波潜
プロローグ パーティから解放された【アイテム師】(※ガイウス視点)
「ガイウス、お前の事は嫌いじゃないんだけどさ……、俺らS級になったし、【アイテム師】のお前の事庇って戦えるレベルじゃないんだよな」
「あー……、もしかして、これ、クビってやつ?」
「……ハッキリ言うと、そうなるな」
冒険者ギルドに備え付けの酒場で、今日発行されたばかりの金色の冒険者プレートを見せながら、リーダーの【パラディン】であるグルガンは言った。
俺は【アイテム師】って初級職だから、同じ金色のプレートは持っていても、グルガンが言いたい事は理解できる。
他には【黒魔術師】のハンナと【上級僧侶】のリリーシア、【重装盾士】のベンも、どこか申し訳なさそうな顔をしている。
まぁ、俺が初級職からランクアップしなかったのには理由があるんだけど……、ここで説得したら理解されるかというと、たぶんされない。
戦力としては確かにタンクでも無ければ火力もない。魔法という物は使えないから回復とか支援もアイテム頼り。
自分の身を守れる程度の短剣使いで、ついでに『投擲』スキルがあるから矢の補充がいらない魔法弓(武器依存で勝手に魔力を矢にしてくれる便利な武器だ)を補佐的に使うくらいで。別にそれも、大した火力じゃあない。外しはしないから、敵の隙を作ったり魔法の邪魔をしたりする程度だ。
……割と有能じゃないか? サポート役として入れといても損は無いよな? と、思わないでも無いが、そろそろ居心地が悪いとは思っていた。
グルガンとハンナ、ベンとリリーシアはデキている。知ってる。わかる。そろそろ俺邪魔だよな。アイテムなんて誰でも使えるし、金もあるから魔道具のアイテムポーチも皆持ってるしな。
「そう遠回しな言い方をしなくてもいいって。お前らがデキてるのは知ってたしさ。S級にランクアップしたんだし、俺もお役御免でも一人で食っていけるよ。田舎なら俺の仕事もあるだろうから、田舎に帰る事にする」
「そ、そうか? いいのか、その、俺たちの勝手な都合で……」
「そういう物だろ、人の縁なんて。2年間楽しかったよ。俺もまだ19で若いし、田舎で仕事しながら嫁さんでも見つけるわ」
「分かった。……これ、今までの報酬とは別に、路銀の足しにでもしてくれ。感謝の気持ちだ」
今までもきっちり報酬は五等分で貰っていたから蓄えもあるし、それとは別に皆で金を出し合ってアイテムは買っていたから俺の懐はそこそこ温かい。
田舎なら畑と庭付きの一軒家が買えて暫く暮らせるくらいには。そんな俺に退職金を払ってくれるあたり、いい奴らだよ。
中身をざっと見たら、金貨が50枚は入っている。たぶん、皆で出し合ったんだろう。
……今後のこいつらの事を考えたら辞退しようかとも思ったけれど、それも思いやりを踏み躙るみたいで悪いしな。素直に受け取って『アイテムインベントリ』にしまっておく。
「じゃあ、俺はここで。拠点に預かってたアイテムとか装備品は全部置いておくから。あー、なんだ……皆お幸せにな」
「ガイウス……元気でな」
「縁があったらまた会いましょ。アナタの事嫌いじゃなかったわ」
「寂しいですけど……ガイウスさんも、お元気で」
「また、いずれ訪ねる」
それぞれに別れの言葉を貰って、俺は笑顔でパーティを抜けた。
まずは拠点に色々置いてかないとな。……俺たち全員でA級パーティという保証があったから庭付きのそこそこいい屋敷に住んでたけど入りきるかな。庭まで使えばなんとかなるか。
あ、騎獣の餌とかも……まぁ置いといたら分かるだろ。俺の騎獣は俺が乗っていくから新しく餌とか水とか買って行かないとな。
田舎っても、孤児院育ちだしなぁ。のんびり寄り道しながら帰るか。
……ところでアイツら、魔獣くらいは捌けるよな? 見た事ないけど。ま、いいか。俺は自由だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます