第37話 夏の夜の夢④
超絶メンヘラストーカー女こと小林 美雪との交際が始まった。
ラブ・ストーリーは突然にという歌もあった様な気がするが、まさか自分の人生のラブ・ストーリーがこんな形で始まるとは、思ってもみなかった。
2年間もの間、俺のストーカーをしていたという美雪の方は、ある程度俺の事を知っているのかもしれないが、俺は美雪がとんでもないレベルのメンヘラで、道徳という概念を持ち合わせていない国宝級美少女という事しか分からない。
ああ、あと一つだけ、彼女がもうすぐ死ぬという事を知っているのだった。
こんなに無邪気に生きているヘンテコな女の子が不治の病を患っているなんて、にわかには信じがたい。
そう言えば…
「なぁ、美雪」
「なぁに?」
「こんな事、聞いてもいいのか分からないし、答えたくなかったら答えなくていいけどさ…」
「なぁに?私のスリーサイズでもしりたいの?85-59.5-85cmだよ‼」
美雪が両手で豊満な胸を揺すりながら楽しそうに答える。
「そうじゃなくてさ…、いやっ、やっぱいいや」
「なぁにぃ~?そんな言い方されたら気になるじゃないの?聞きたい事があるんなら聞きなさいよなんでも答えてあげるからさ。エロい事でもいいよ‼」
「……、もうすぐ死ぬって、あとどれくらいなのかなと思ってさ」
「3ヵ月」
「えっ?」
「だからぁ~3ヵ月、90日。まぁ、宣告されてから日が経ったから、正確にはあと80日くらいかなぁ?」
80日、たった80日か。
なんでこんなに…。
「なんでこんなにヘラヘラしてられるんだって思った?」
「……。」
「怖いよ。辛いよ。苦しいよ。悲しいよ…。そういって下を向いて生きる80日よりはさ、せっかく好きな人と一緒に過ごせるんだから、うれしいなぁ。楽しいなぁ。幸せだなぁっていう80日を生きたいなって思うから、だから君の目からはヘラヘラしてる様に見えるかもしれないけれど、私は残された僅かばかりの命を本気の本気の超本気で燃やし尽くそうとしているのです。」
「……。」
「ちょっとぉ、その顔やめてよぉ~、マジしらけるんですけどぉ~、死ぬの君じゃなくて私なんですけどぉ~」
「だからだよ…」
「えっ?」
「自分の命なんてどうでもいい、俺はもう、とっくの昔に死んでるからさ…、でも…」
美雪がうつむく俺の顔を覗き込んでくる。
相変わらず距離感がバグっている。
そろそろ止まらないと唇がくっつくぞ?あっ、くっついた。しかも舌をいれてきた。
ぢゅる、ぢゅぽっ、ぢゅぱっ、ちゅっ、ぢゅるるるる、ぢゅぽっ、ぢゅぱっ…あっ♡
「……」
「生きてんじゃん、生命力じゃん。今めっちゃ命感じた。私イッたもん。めっちゃ濡れてるし。君は死んでなんかないよ。死んだ人間には女の子を濡らす事もイカす事も出来ないだから」
美雪はスカートの中に手を突っ込むと、指先についた粘々したものを俺に見せる。
「舐めろよ‼」
「……」
「下向いてないで舐めろよ」
俺は美雪に促されるままに、指先についた粘液を舐めた。
「どんな味がする?」
「ちょっぴりしょっぱくて…少し苦味もあるかも」
「生きてんじゃん‼君、今完全に生きてんじゃんか」
ハイになった美雪はもう一度スカートに手を突っ込むと大量の粘液で濡れた指を俺の口に突っ込んでくる。
「生きてんじゃん‼君、生きてんじゃん…あっ、あん♡」
息ができない、苦しい、やべぇ意識飛びそう。
意識が飛ぶ寸前で指を俺の口から引き抜くと。
「今日はもうおしまい。初デートであんまり飛ばしちゃうと良くないからね。今日は楽しかったよ♪またね‼」
そう言って美雪は家路についた。
なんなんだアイツ…、面白いじゃん。
世界に期待しなくなってどれくらい経つだろう?
俺の世界から色が無くなって幾年月振りに生を実感しただろう。
俺は今、確かに生きている。
生きているんだ。
ちょっとしょっぱくて、少し苦かったな。
やっぱりアイツ、面白いじゃん。
人生捨てたもんじゃないんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます