第21話 レーサーの処刑
そこに折りたたみ式の板がかけられ、橋ができる。大型車両の運転席に
マルコなら当然突っ込んでいくだろう。レーサーに悪い奴はダニー・モーレイ以外にいないという考えの下にだ。だが、俺はただ呆けたように見ている。スモッグで歪んだホールの空に青いランプが酩酊している。
マルコを殺したのはUコードシステム。アンヌ・フローラ。じゃあ、
拳を握っていた。ただ明確な対象が俺には鈍っていると、客観的に思えた。
俺の憎悪はシステムにある。だが、システムなんてどうやって憎めばいいんだ。俺はアンヌ・フローラにだって会ったことがない。テレビで見るだけだ。
なら、俺はこの
今この瞬間だってマルコは傍にいない。相談するにも、止めてくれる人間も、全てがマルコだった。
イザークなら、俺を笑うだろう。だが、それでいてイザークは憧れの人のままだ。俺の内面が冷たい炎で焼かれていようとイザークは気にしない。マルコなら、全部分かってくれる。イザークに憧れる俺を止めたりもしたが、それでもマルコは俺の革命への憧れそのものを否定はしない。
いつしか、
レーサーは、電子手錠をかけられ、わざわざ野次馬の見える方向へと向きを変えられた。
レーサーが何かを察したのか
シャツの伸びる音が聞こえた気がした。レーサーは上着が剥がされるのも構わず負けじと
レーサーの悟った声が断末魔に変わる。
喉から血を押し破って水が吹き出る。弾けた水はただの水で、目を剥いたレーサーの服を濡らすだけだが、垂直に正されたジェットは男の胃袋も貫通して、胃液のような黄色い液体も撒き散らす。
それだけじゃ飽き足らず、容赦なくノズルから噴出される水は大きな槍のごとく男の腹まで到達した。口に入りきらなかった水と逆流する血液。飛び散る歯や歯茎の血肉。男の顔から表情が消えてからは身体は人形のようにジェットに揺られている。
あごに空いた穴が広がり、引き抜かれたノズルが男の口から去り際、下あごを吹き飛ばして処刑は終わった。
「レーサーは反逆者に然り」
やりやがった。革命グループでなくても公開処刑に踏み切った。レーサーなら誰でも殺すつもりだ。
「アンヌ・フローラ最高司令官総長の権限により抜き打ちのエリア隔離調査を行う」
「このホールにはレーサーのダニエル・ディールスもいるはずである。見かけたものは
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