第2話 愚者の食卓

 あれから半年が過ぎた。


 愚か者どもへの仕返しは順調に進んでいる。


「奥様、お嬢様、お食事の用意が整いました」


「ありがとう。今日の献立は何かしら? 楽しみね」


 何も知らずに食卓へ移動する愚か者どもを、私は嘲笑しながら見送った。この半年間、毎食高たんぱく高カロリーのプリン体たっぷりな食事を取らされているとは夢にも思うまい。


 元々が貧乏男爵家の出だったらしく、伯爵家に来てから出される食事は何でも「美味い美味い」と言って食べている。香辛料をこれでもかとばかりにふんだんに使っているので、高血圧まっしぐらだ。


 次第に醜く太り始め、肌荒れは酷く、髪も艶を無くしている。口内炎でも出来ているのか、度々食事中に顔を顰めたりしている。


 そんな姿を見ていると、笑いを堪えるのが大変だ。


「デザートでございます」


 これまたお砂糖たっぷり脂肪分たっぷりの甘~いスイーツだ。糖尿も患って貰おう。


「フフフッ、あなたにこんな贅沢はもったいないわね。その分私達がたっぷりと堪能させて貰うわ」


 私は吹き出しそうになるのを慌てて堪えた。これ以上、笑わせないで欲しい。


 ちなみに私はこの後、使用人達と一緒にヘルシーな食事を楽しんだ。



◇◇◇



 使用人に身を落とされて以降、私は他の使用人達と同じように掃除、洗濯、炊事、何でもやった。当初は気を遣ってくれて、やらなくていいと言われたが、私が自分でやると言い出した。


 実際。体を動かしているのが心地よい。伯爵令嬢だった頃より健康的になったくらいだ。私に合っているんだと思う。体も引き締まった気がする。


 掃除をしていると、義母や義姉がわざと私の目の前を汚したりするなど、みみっちい虐めを繰り返してくるが、そんなのは可愛いもんだ。暴力を振るってこないだけマシだろう。


 最もやられたらやり返すけど。私に自虐趣味は無いので。良く、服を着たら見えない部分を鞭で打ったり、焼きゴテをあてたりとかする陰湿な虐めを耳にするけど、なんで抵抗しないのかと思う。


 私だったら必死で抵抗する。力で敵わないなら屋敷に火を放ってでも抜け出そうと努力する。やられっ放しは性に合わない。


 そもそも、服を着たら見えない部分を傷付けるっていうのがバカのやることだと思う。証拠を残すだけじゃないか。服を脱いだら分かるんだから、嫁に行ったら即バレるだろうに。私だったらそんなヘマはしない。もっと巧妙に更に陰湿に虐め抜いてやる。


「三時のおやつの時間です」 


 糖分たっぷり脂肪分たっぷりのお時間です。


 


 

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