第92話 帝国北部辺境領

 ユグイゾーラで一夜を明かし、俺達はオメガで帝国へと飛び立つ。

 帝都のギルドマスター『ボルビック』から情報を集め、ギースの行方を特定するのが当面の目標だ。


 爺ちゃんの活動限界が後六日しかないので、余り悠長には出来ない。

 

 インビジブルを発動させて帝都の外壁の外に着陸させる。

 無振動馬車にスレイプニルを繋ぎ、帝都の冒険者ギルドへと向かう。


 爺ちゃんは見た目がつい先日、帝都で大虐殺を行った、黒曜石ゴーレムの姿だから、絶体街がパニックになってしまうので、オメガでガンダルフと一緒にお留守番だ。


 転移門の作成も頑張って欲しいしな。

 

「ボルビック。状況はどうなの?」

「メーガン様。どうもこうもありませんね。帝都の近衛部隊は壊滅したままですし、衛兵だけではとても手が回りませんから、特別に冒険者ギルドで、帝都内の治安維持を受け持っています」


「どの勢力が帝国を纏める事になりそうなのですか?」

「現在、帝国軍を纏め上げて郊外の駐屯地に構えているのは、マクレガー大佐と言う生粋の軍人家系の人物です、彼自身は帝国を手に入れようと言う野心がなく、正当な国家元首が決定すれば、帝国軍はそれに従うと声明を出し、今回の内戦には帝国軍20万人は参加しないと言っています」


「マクレガー大佐って、僕たちにヒュドラ討伐の時、壁の前で説明した人だよね?」

「そうです。レオネアさん。帝国の将官がことごとく皇宮で殺されてしまい、現在帝国軍の最高責任者の形ですね」


「でもさ、帝国軍は40万近く残っていたんだよね? 掌握してるのは20万だけなの?」

「殆どの士官は貴族家の人間だしたから、自分達の部下を連れて覇権を目指して自分の領地に戻った軍人が半数ですね」


「そうなんだ。でもその状況なら、結局マクレガー大佐が味方になると決めた人が、皇帝になっちゃうよね?」

「いえ、それがマクレガー大佐は皇帝制度に否定的で、共和国制度を導入したい考えだそうです」


「それじゃぁ大貴族達が納得いかないで、纏まらないんじゃないのかな?」

「どうでしょう。少なくとも彼は悪い人間では無さそうですし、ギルドとしては今のところ静観ですね。他の国が入り込んできて領土を切り取ろうと動き始めましたから、マクレガー大佐の掌握している軍は、その対処に向かうのではないでしょうか?」


「ボルビックは、王国のギースの情報は何かないのかい?」

「その名前は聞いていませんね」


「そっかぁ、絶対この混乱に混ざってると思うんだけどなぁ」

「聞いても良いか?」


「カインどうした?」

「一番戦争の過激な場所はどこだ?」


「それは、北部ですね。通商連合国から傭兵部隊が送られてきて、激戦になっている様です」

「傭兵か…… ありそうだな。ギースは決して弱くは無いし、奴の装備だけはチート級だからな」


 感だけではあるけど、俺は絶対ギースがそこにいる様な気がした。

 

 急ぎでオメガに戻り、北部辺境伯領へ向かう事にした。


「レオネアは通商国に居たんだろ? 傭兵ギルドとかに伝手は無いのか?」

「僕は直接は傭兵ギルドと関りを持って無いね。知り合いの冒険者達なら繋がりはあると思うけどね」


「そっか。北部の国境へ行って見て、手掛かりが無さそうだったら、レオネアの知り合いに聞いて貰っても良いか?」

「うん解ったよ」


 帝国北側の国境地帯はそこまで高くない山によって、国境が定められている。

 その山の中を主戦場として、戦闘は行われていた。


「国境線が長いから大部隊同士の戦闘じゃ無くて、少数が戦うゲリラ戦みたいになってるね」

「魔物も普通に出てくるだろうし、戦いにくそうだな」


 ジュウベエとそんな話をしてた時だった。

 眼下にある山脈の一角がいきなり崩れ落ちた。


「何事だ?」

「一瞬光の筋が走ったぞ」


「あれは、聖剣『ゼクスカリバーン』の力ね」

「メーガン…… と言う事はギースがいるんだな」


「見つけたか。じゃぁちょっと行って来るかのぅ」

「坊や、ギースは既に聖剣に取り込まれてるわよ、ちょっと大変そうだわ」


「俺が一緒に行くよ。一応、幼馴染だしな」

「カインお兄ちゃん。私とケラも連れてって。ミルキーも一緒な筈だし」


「フィル…… 大丈夫か?」

「うん。ドラゴンブレスは私達が責任もって終わらせなきゃ」


「そうだな……」


 いよいよ、ギースと向かい合う事となる。

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