第86話 再びアケボノへ

 ハイエルフ達と話しをしながら、今日の夕食をご馳走になる事になった。


 ここに住むハイエルフ達は基本飲み物は水だけと聞いて少しびっくりしたが、出された水が凄かった。


 世界樹の朝露を集めたという水で、とてつもなく美味かった。

 人工的では無い爽やかな甘味を感じ、後口もすっきりしている。


 そりゃこんな水飲んだら、他の飲み物必要ないよな……


 きっとこんな水が朝露で採れるなら、このTB亀テラバイトタートルの上に生えている植物や果実はとてつもなく美味いのでは? と思った。


 用意された夕食は、見事に野菜が並んでた。

 全部この亀の上で、自給自足で育てているそうだ。


「えーと…… ハイエルフさんは、ベジタリアンなんですか?」

「いや、別にそんな訳では無いのだが、このユグイゾーラの上で殺生をすると、TB亀の頭が襲って来るからの」


「だったら、俺の魔法の鞄に美味しい肉や魚がたっぷり入ってますので、何か作りましょうか? 俺は料理人のカインです」

「ほう、肉も魚も随分久しぶりじゃな。150年ぶりくらいかの」


 俺は早速料理を始めた。

 手早く出せる物が良いと思ったので、肉はオークジェネラルのベーコンステーキだ、3㎝ほどの厚さに切ったベーコンをじっくりと焼き、上にはエッグベネディクトを乗せて提供した。


 魚は先日エドのツキヂの市場で仕入れて置いた、ブリを照り焼きにした。

 火を通し過ぎない様に作り上げると、身から透明な脂がにじみ出て来て、醤油の焦げた匂いも食欲をそそる。


 この時に使ったタレは、俺はウナギを焼く時のかば焼きのたれを使う。

 ただし、ウナギ以外の物に使うときは、たれに直接浸けては駄目だ。

 タレが生臭くなるからな。


「どうだ? 美味いだろ」


 ハイエルフのみんなにも大好評だった。


 フィルがハイエルフのラファエルさんと魔法薬の錬金の事を相談していた。

 すると、世界樹の葉と朝露を薬草に加えて錬金すれば、エリクサーが出来る可能性もある事を教えて貰えた。


 食事のお礼にと、世界樹の葉と朝露を分けて貰えたので、ナディアとアイシャが勉強をしている間は、定期的に訪れて食事を作る事を約束した。


 転移の魔導具が量産出来たら、このハイエルフの里にも設置したい所だな!


「取り敢えず、この次はどうする?」


 俺がそうみんなに尋ねると、ジュウベエが返事をした。


「爺ちゃん死んじゃったけど、アケボノで予定してた通りに、『ヨミノクニ』ダンジョンやりに行かないか?」


「俺は構わないけど、みんなはどうだ?」


「僕は賛成」

「私も『ヨミノクニ』には興味があります」


 チュールとフィルは俺が行くなら問題無いと言う事で、アケボノへと戻る事になった。


「ナディアとアイシャはここでしっかりと学んでくれよ。定期的に遊びに来るからな」


「はい、かしこまりました」

「頑張ります」


 俺達は夕食を食べ終わるとハイエルフ達に別れを告げ、転移の魔導具を使って、オメガへと帰還した。


 飛空船に戻ると、ガンダルフがベータとガンマを相手に色々と質問をしていた。


「お主らは古代遺物なのに、何故古代文字が読めぬのじゃ」

「読めると自分で制御方式を変更して、自由に出歩けたりするようになってしまうので、最初から文字の認識機能は省かれております」


 そうだったんだ…… 


「ガンダルフ。次はアケボノに行くからな」

「カイン殿。わしにも飛空船の操縦を教えて貰えぬか?」


「別にいいけど、魔力は足りるのか?」

「わしは、土魔法と錬金術のギフトを持っておるから十分じゃと思うぞ?」


 俺は一応アルファに確認してみた。


「お答えします。ガンダルフさんは、オメガの上昇、航行共に可能です。速度はカイン様の次に高速航行出来ます」


「凄いじゃん。ナディアやレオネアより魔力が多いとか」

「ハッハッハ。ドワーフを甘く見ておったじゃろう。一度鉱山に潜れば長時間掘り続ける事など当り前じゃからの。身体強化も鍛冶の間は常時纏い続けて居るし、魔力は比較的高い者が多いんじゃ」


「そうなんだな。ガンダルフは基本オメガの中で留守番でいいのか?」

「勿論じゃ。新たな魔導具の研究だけで十分に満足じゃからの。この飛空船も、アイシャが戻ってくれば、必ず再現して見せるぞ」


「よし。それじゃぁ、アケボノへ向かって出航だ!」


 

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