第66話 新しい扉

「ちゃんと準備を整えてからの方がよくない?」


 玲愛は明らかに狼狽えており、もはや拒んでいる色さえ感じられた。


「嫌なの?」

「嫌っていうか……その……」

「隠さずに教えて」

「また出来なかったら……やっぱショックだし」


 玲愛は目を合わさずにぽそっと呟く。


「もしかしてそれで最近しようとしなかったの?」

「バレてた?」

「ごめんな。変な気を遣わせて」

「そうじゃないよ。茅野さんが悪い訳じゃない。あたしじゃ駄目なのかなって不安になるの」

「玲愛じゃ駄目なんてわけないだろ。むしろ玲愛じゃなきゃ治らないくらいだ」

「ほんと?」

「もちろんだよ」


 シャツのボタンを外して胸をはだけさせると玲愛は一気に顔を火照らせた。


「マ、マジでここで、しちゃうの……?」

「恥ずかしい?」

「ベッドに行こうよ」

「駄目だよ」


 ところ構わず求める。

 思えばそんなことしたことがなかった。

 無作法にリビングではしたなく愛し合うという背徳感に背筋が震えた。


「も、もうっ……そんなにっ……んぁっ……ああっ……」

「綺麗だよ」

「茅野さん、すっごくエッチな顔してるし……」

「そりゃすごくいエッチなことしてるからね」

「ばか。茅野さんも脱いで」


 じゃれ合いながらお互いの衣服を脱がせ合う。

 脱がせた場所にキスを落としあい、時おり擽ったさに声をあげて笑った。


 しかし最後の一枚をつるりと剥ぎ取ると、玲愛の表情から余裕が消えた。


「ここもキスしてあげる」

「あ、あたしはいいから! それより茅野さんのを……してあげる」


 玲愛はニヒッと笑い、先日の動画学習で学んだことを実践してくる。

 細い指で握られ、ちゅろっと生温かさに包まれる。


「んっ……」


 玲愛は見よう見まねで奮闘してくる。

 歯に当たり痛さもあるが、懸命にしてくれるのが嬉しい。

 とはいえやはり完全に大きくなることはなさそうだ。

 それを伝えてはいないが本能的に理解したのか、玲愛は徐々に焦る顔となる。

 ここでやめたらまた玲愛を傷つけてしまうし、俺も完治が遠退く気がした。


「じゃあお返しに今度は俺が」

「えっ!? あたしはいいから! ひゃうっ!? そこは駄目! え、あっ……う、うそっ……汚な……へ、変態っ……」


 チコチコと舌を這わせているうちに、玲愛の抗う力も弱々しくなっていった。

 言葉にならない声をあげ、内ももを緩ませたり、ふくらはぎを強ばらせたり、脚の指をうにうにと蠢かしたり、忙しない反応を見せる。


「もういいから……おねがっ……ううっ……んぅーっ! と、蕩けちゃいそぉだから」


 許しを乞うために伸ばしてきた手を握り締める。

 転がしていたところをぢゅっと強く吸うと、玲愛は歯をギリッと食い縛る。


「あー、ダメダメっ……」

「愛してるよ、玲愛」

「あ、あたしもっ……あたしも大好きっ! あ、ごめっ……なさいっ! もう無理っ……」


 玲愛はビクビクっと身体を震わせ、俺の名前を叫びながら気を飛ばしていた。


「玲愛はかわいいな……」


 息の上がった玲愛の頭と背中を撫でる。


「ダメって言ったのに! ひどいよ、茅野さん」


 ちょっと涙目の玲愛を見てゾクッと震える。

 予想もしない自分の反応に驚いた。


 もしかしたら……


「まだ終わりじゃないよ、玲愛」

「んうっ!? い、いまは駄目っ! ちょ、マジで!」


 逃げようとする玲愛の腰を抱き、更に指で追い討ちをかける。


「一回待って! ふぁっ! たんま、いま駄目っ! あー、だめだめだめっ! っあぁ!」


 玲愛は右目をぎゅっと瞑り、左目は切なそうに俺を睨む。

 立て続けに飛んだ玲愛はくてっと弱々しく横たわっていた。


「もぉだめ……だめだよ、茅野さん」

「玲愛、これ」

「えっ!? な、なに、それ!? そんなに大きくなるワケ!?」


 玲愛は目を丸くして唖然とする。

 正直俺も驚いていた。

 少し強引に、いつもより意地悪に玲愛を可愛がったことで自分でも知らなかった扉を開いたようだった。


「ねえ、茅野さん、早くあたしに」

「いいの? 休憩したいって」

「そんなのいいから!」

「あ、サンタさんのプレゼント……」

「もうっ! そんなのはいいのっ!」


 玲愛は可愛く怒りながら俺に抱きついてきた。




 ────────────────────



 新生茅野さん誕生でした!

 いよいよ二人も結ばれ、物語は大団円へ!


 昨日はコメント付きレビューも頂き、ありがとうございます!

 応援コメントってもらうと私の名前と読者の方が並んで表示され、なんか気恥ずかしくて嬉しいです!


 Web小説というのは読者の方と作り上げていくという要素があると思います。


 私一人では辿り着けない場所も、読者の皆さんの力で行ける気がします。


 いつも本当にありがとうございます!


 さて甘々を通り越したデレ甘々な今回でした。


 本来であれば3倍の分量を要して子細に描きたいところですが、さすがにそこまでは出来ないので。


 心も身体も繋がった二人に幸せあれ!


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