ツンデレ守護霊と神様と救済
うめもも さくら
私を救ってください
私は自身の存在が何の為にあるのかわかりませんでした。
誰かと話すことも、誰かと笑いあうことも、誰かとみつめあうこともできない。
私の姿は見えない。
私の声は聞こえない。
私の想いは届かない。
誰にも。
私はただ見てるだけ。
生き物が産まれ、生きて、死んでゆく光景を。
私はただ
時代が始まり、流れ、終わっていく時間を。
ただひとり、たった
彼女と
「今日は
「やった!揚げ物きたぁ!!」
彼女の後ろから
彼女に害をなさないので
その上彼は
彼と過ごすことを彼女が望むので
私には彼女だけ。
彼女さえ元気で幸せでいられるならそれだけで良いのです。
「神様も揚げ物でいい?」
「
「ってか俺はいいけどあんたダイエットやめたの?見た目そんなに変わって見えないけど」
確かに彼女は太ったと悩んでは無理に
そんな女性にそのような
なんとも
いっそのこと
「口さがなく言うものではありません。君自身、彼女は今までも今も変わらず愛らしい。そう思っているのでしょう?ならそう言いなさい」
「それはっ……無理だよ、ってか神様はさ、優しすぎるってか、
「そんなことはないと思いますけどね」
口ごもるだけで
「いや、ダイエットはやめたくないんだけどね。なんか最近テレビとかで
自分ご
愛らしいものというものは強く抱きしめたくなるものですが、
ひとまずこの
「……いいこですね。自分で自身の健康や安全のことを考え、守り、判断することは決して悪いことではありません。とても良い事です」
ふふふ、
それと少々
とても愛らしい。
目の
「早く作ろうよ……」
私が無視していることを知ってか知らずか、この空気に
彼の
なんとも
本当もうこの霊魂……
「今日はこの大量に買ったポテサラを揚げます!」
「あぁ、ダイエットにはサラダだよねとか言って大量に買ってすぐ飽きたポテサラね。揚げるってことはコロッケってこと?」
もうこの霊魂一言も二言も多いんですよね。
彼女が傷つくような言い回し、本当にやめていただきたい。
「ふふふ、今日はハムカツです!ポテサラ入りの
少々心配しましたが彼の言葉は彼女の心には
ほんの
包丁などは使わないようですが、火や油で彼女が
「ポテサラをハムに
「もちろん。なにしろ貴女の作る料理は全て美味しいに決まっていますから」
「神様!こいつに巻き付いたりして料理の邪魔しないでよ!ごはんが遅くなるっ!!」
巻き付くと言われるのは
ただ彼女の肩に腕をまわして、頭を撫でているだけだというのに。
「あはは、神様はなんか……照れちゃうなぁ……」
「
「嫌じゃないよっ!!全然!!ただちょっと照れちゃうだけなの!」
彼女は優しくて愛らしいとてもいいこです。
やはり私が守ってさしあげなくては。
悪いやつに
「ポテサラを挟んだハムに小麦粉をまぶして
野うさぎのように動く彼女は愛らしい。
ずっとみつめていたくなります。
……ん?誰か来ますね。
ピンポーン
やはり
油を熱する前なのはよかったのですが、なんでしょうかね……この
この
「誰だろ?ちょっと見てくるね」
「いや、俺たちもついていくけど……あんた女なんだから気をつけろよ。急な来客なんて変な人かもなんだから」
こういう時はちゃんとしてるんですよね、彼も。
世の中の人間全てが彼女のように
悲しいことですが
「すいません、ガスの
「ガスの点検……ですか?すみません、今ちょうど
「そうなんですね。ではお
……なんでしょう
ガチャン
「……っ!!」
横で息をのんだのは守護霊くんですね。
まったく人を信じすぎてしまう彼女の
まぁ、
彼女は何も悪くありません。
悪いのは……。
「今日、点検だったんですね。知らなかったです」
「急に決まって。お風呂から失礼しますね」
入ってくるな!と
これで
「お邪魔しますねぇ」
その声はなんとも
私たちに気づくはずもない男は風呂場に足を踏み入れると小型の機械を手に持った。
……カメラですか。
「……だめみたいですね……」
「神様……わかった、任せるよ」
私は何も言ってないんですけどね。
そこそこ長いつきあいですから。
私の言わんとすることはわかりますよね。
「彼女をお台所にお連れください」
守護霊くんが彼女の背を押しながら戸の向こうに消えるのを確認して私は男に目を向ける。
私はね、あまり優しくないのです。
今すぐ叩き出してあげますよ。
それくらいできますよ。
力がありますからね。
私、神様なので。
消えなさい……。
「え?点検って間違いだったの?」
「今、神様が追い返してくれてるけど直観でわかるでしょ?急に来るわけないし、たとえ本物だったとしても急に開けるのは不用心すぎ!ちゃんと業者に確認しないとだめ!」
「ごめんなさい」
「……あの男も直観力のないヤツだったね。わかるべきだった。さわらぬ神に
「ん?何?」
「……なんでもないよ。あとは揚げるだけでしょ?早く作って食べよう、お腹すいたよ」
「いい
「おかえり……事故のニュースでも流れてくるかな?」
「彼女の耳には入りませんよ」
私がそんな
「できたよー!食べよう!」
「はい、美味しく食べましょうね」
私は彼女に向って
『For your love この手がもし
君から
何ひとつ Save Me』
テレビから聞き覚えのある歌が聞こえてくる。
「
「神様の場合共感するならもっと違う曲だと思うけどね」
どんな曲ですか?と聞く私を
私はね、
私が、私だけがその笑顔を守ってあげる。
彼女が、彼女だけが私を
彼女は何もしてないと思うかもしれないけれど。
ただ出逢ってくれただけで。
ただ彼女がこの場所に存在してくれるだけで。
私がこの場所に存在している意味になる。
彼女だけが私を救うことができる。
それを忘れないで。
ただそばにいて。
ただ私を救ってください。
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