□ 兄の言葉

阿毘羅吽欠娑婆呵(あびらうんけんそわか)。


友人にある日、宅配便が届いたそうです。

差出人は不明ですが、段ボール上部には

『□ 兄の言葉』と書かれていたそうです。


お兄さんがいる友人は電話をして確認をしたけれど、

お兄さんは何も送っていないとの事でした。


不審に思った友人ですが、

まずは中を確認しようと言う行動に出ました。

怪しいけれど、中を見たくなるのは性とも言うべきか。

あわよくば一人暮らしなので、

食べ物でもあればラッキーとさえ思ったそうです。


開けて見ると木彫りの人の形をしているが、

人形と言うにはあまりにお粗末なものが1つ入っていた。

頭部と思われる場所には半紙を小さく切ったものが貼ってあり、

目・鼻・口と漢字で書いていた。


ひっくり返して背中を見ると

『〇〇〇〇・阿毘羅吽欠娑婆呵』と書いてあるのがわかった。


読めない友人は、何かないか箱の中身を確認した。

すると1枚のメモ紙が貼ってありこう書かれていた。


『〇〇〇〇・あびらうんけんそわか』


友人は呟くように『あびらうんけんそわか』

と読み上げ、他には何も書いていないので人形を箱に戻し、

翌日燃やせるゴミで出したそうです。


その話を友人から聞いた数日後、

友人が体調不良を理由に大学に来なくなり、

電話も出ないので心配でアパートに行ってみるが、

応答はなく、その三ヵ月後、

消息不明となって親から捜索願を出されました。


私も警察が話を聞きたいとの事で、

あの時の荷物の話はしたのですが、

消息不明な事と関係ないでしょうと口元で笑われました。


そんなある日別の友人に同じ荷物が届いたとの事で、

その箱を開けないように説明し、見せてもらう事にしました。


確かに箱には「□ 兄の言葉」と書いてありました。

その友人にもお兄さんが居て、荷物は送っていないとの事でした。


ふと気づいたのですが・・・


□は見出しの四角マークではなく、

もしかするとクチ辺なのではないだろうか。


だとすると、兄の言葉ではなく・・・


呪の言葉 なのではないだろうか。


お兄さんのいる人を選び、呪物を送りつけ、

自分に呪いが発動する呪文を言わせているのでは。

一体誰が…


それから月日が流れ、通っている大学の講師が

個人情報を抜き取り悪用したとの事で逮捕された。

その内容とは、呪いを込めた人形を送りつけることに使ったとの事。

講師は取り調べで

『私の授業を全く聞かない馬鹿どもに呪いをかけてやりたかった』

と話していたそうです。

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