スピリットボックス

「スピリットボックス」とは、「無線周波数(高周波)」と言う人の耳では聴こえない周波数の音の波や雑音(ホワイトノイズ)をキャッチして、人が聞き取れる音(言葉)や音声に変換してくれるという仕組みで、霊が発している本来なら普通の人では聴こえない声や言葉を聴くことができる装置…とされている。


YouTubeのホラーチャンネル系の配信者も、霊が出るとされている廃墟でスピリットボックスを使用し、霊の声が入ったりして動画を盛り上げている。


個人で廃墟を探索するのが好きな私は、そのスピリットボックスを手に入れて、早速地元最強と言われている廃病院へ向かった。


ここに来るのは3度目だが、むしろ3度目の方が怖さがある。地元最強なだけに、探索に来る人が多いので、日々廃病院内部の様子が変わってゆくからである。以前来た時と違う姿を見て、時の流れが止まっているはずなのに、荒廃が進んでいる印象を受けるそのギャップが怖さとなってザワザワと心の中を撫でまわす。


私は地下1階の霊安室を目指した。


幽霊と言えば霊安室、まぁ間違いないでしょう、と言う事で、何度も言うがここは3度目なので迷わず向かうことが出来た。当然エレベーターは動いていないので階段を使って下りるのだが、自分の足音が反響してまとわりついて来る感覚が気持ち悪かった。


霊安室の蝶番が外れて床に倒された扉を踏みしめて、バキバキと乾いた音を立てながら中に入った。霊安室と言う部屋看板が無ければきっと怖さは半減するのだろうけれど、残念ながら知ってしまっているのでその恐怖は3度目だろうと変わらない。


10分程その部屋にとどまると、バキ!パン!と、お決まりのラップ音が鳴り始める。『よし』と決心をし、私はスピリットボックスのスイッチを入れた。


ザカザカザカザカ・・・・


ノイズの音が妙に恐怖と期待を煽って来る・・・


『誰か居ますか?』


ザカザカザカザカ・・・・


『誰か居ますか?』


ザカザカザカザカ・・・・


【い・・・・】


『ん?何か聴こえたような・・・』


『誰か居ますか?』


ザカザカザカザカ・・・・


【い・・・・】


『え?なに?なんだって?もしもし?』


【いるっつってんだろ!】


スピリットボックスから怒鳴り声がした!さすがに焦った私はスピリットボックスのスイッチを切って霊安室から逃げ出した。

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