臭う女

霊的な感覚と言って良いのかは分かりません。

専門家ではありませんので。

しかし、お線香の匂いがしたり、知り合いが愛用する香水の匂いがフッと香る事はないだろうか、そう言う時決まって良くない知らせが舞い込んだりする。


少し違う話なのですが、私が勤める介護施設に主任を務める松田と言う女性がいる。その松田は見た目的には派手めで、オールバックを後ろに縛るポニーテールがトレードマークだが、パーマなその髪の毛を縛るとチアガールのポンポンのようにボリュームがあった。ダンスでもやっているのか足首は細いのに太ももからヒップへのラインが力強く、そのボディーで跳ねる様に歩くと、髪の毛もポンポンとリズミカルに跳び回った。介護職員らしからぬビジュアルなので、良く思わない中年職員は常に松田の噂話をするのだった。


私はある日、気が付く事があった、それが匂いだ。

いや、訂正する「臭い」だ。


汗臭いともまた違う・・・そう、アレだ、獣臭だ。


猫をたくさん飼っている方は若干猫の臭い、いや、独特な獣の臭いがする、

松田からはその獣の臭いがしたのだった。すれ違った瞬間、臭いが付いてくるあの感覚・・・『猫でも飼っているのかな』私はそう思うと、思わず『ん?』と声に出していたらしい、松田がそれに気づき『え?』と振り向いた。その顔は松田より明らかに松田ではなかった。わかりやすく言うと、目が吊り上がり、もはや狐だったのである。その顔に気付き、もう一度『え?』と言ってしまった私。松田は『え?え?どうしました?』近づく松田はもう松田だった。そう、狐ではなかったのだ。


それから3回ほどその臭いを感じ、同時に狐顔の松田を見たのです。


何人かに松田に失礼のないように『松田さんって猫とか飼ってるのかな』とさりげなく聞いたが、答えは全員がノーだった。


飼っていないのだ、何も。


しかも誰一人臭いに気付いていない様子。

それから月日が流れ、移動となった私は、松田と一緒に仕事をしていた大林と言う女性に出会った。松田の臭いの事を思い出し、あの施設の怖い話からの流れで、ついでに松田さんって獣臭したんだけど・・・と大林に言うと、大林は『え?気づいてたの?誰も言わないから私だけかと思ってた!顔も・・・変わるよね?』と言ってきた。


大林は幼少の頃より霊体験と思しきものを数多く体験していると言う。私も実はそんな体験が少ないわけではない、私と大林しかわからない松田の獣臭、そして狐顔。


今でも松田はその施設で働いているが、人間なのだろうか・・・

まさか狐では・・・そんな思いが込み上げてきました。

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