アヤカシバナシ

如月 睦月

ある夏の事でした・・・

地元で有名な自殺の名所、しかし海が綺麗で有名でもあり、遊泳禁止エリアに入らなければ泳ぐことは許された。

その許された場所も十分綺麗だが、足場が悪く、潮の流れも速い。

いわゆる泳ぎの達者な人じゃなければ近寄らない場所でした。


男性2名でその達人専用スポットへ行ったそうです。天気も良かったので2人は海水浴を楽しんだ。するとAの足に何かが触れた。

魚とは違う何か柔らかいものが脹脛辺りをサワ~っと。『ん?なんだ?』と気にした瞬間、明らかな人の手が足首を掴み、グイ!っと水中へ引っ張った。溺れるまでは行かないものの、かなり驚いた。


一緒に来たBだと思ったが、Bは浜でBBQの準備をしているのが見えた。Aはどこかのダイバーの悪戯だろうかと思い、潜ってみることにした。


鼻から息を思い切り吸い込んで水中にドパン!視界から泡が消えた時、目の前に女性がおり、いきなり両手を伸ばしてAの両肩を掴んでグラグラと揺らしたと言う。Aは岩を思い切り蹴り上げるようにして水上に出た。


慌てて泳ぎ、飛び跳ねるように走って浜にバシャーンと倒れ込んだ。


ハァ・・・・ハァ・・・・


ハァ・・・・ハァ・・ハァ・・・


Bが声をかける。


『お・・・おい・・・それ・・・誰だよ』


『はぁ?』


『お前の横に居るの誰だっつってんの!』


AがBの指差す左を見ると、女性が倒れ込んでいた。回り込んで見ると眼球が無く、岩にあちこちぶつけられたのだろう、頭が割れているのが分かったそうです。皮膚もふやけてぶよぶよになり、ところどころ裂けており、

あちこちからブクブクと泡が出ていた。腹部も大きく裂けており、臓器が少しはみ出していた。


警察を呼び、救急車も到着。

担架に乗せようと数人で女性の遺体を持ち上げると、割れた頭がパックリと開き、恐らくだが脳みそであろう堅めのババロアのようなものがドチャ!っと落ちた。思ったよりピンク色だったそうです。担架を一度下ろして割れた頭の補強みたいな処置をしていると、裂けた腹部からカニが1匹出てきたそうで、そこでAとBは堪え切れずに嘔吐した。


『カニはよく入ってるんですよ』


そう言うと救急隊員が遺体の裂けた腹部を軽くポンポンと叩くと、勢いよく小さいカニが3匹飛び出してきた。


事情聴取を受けたA


引きずり込まれた体験を正直に話すと、馬鹿にされるどころか『流れついて放置されるのは嫌だった・・・のですかねぇ』と、年配の警察官が言ったそうです。


そういう経験を数多くしてきたのかもしれません。見つけて欲しかったのか、最後にすがりたかったのか、とにかくAとBが来てくれて良かったと感じている気はします。


しかし2人は、暫くの間、ミートソースとカニが食べられなかったそうですけどね。

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