第42話 第四話 その3 ちゅん助ごねる!
「おおおおおおおおお!」
ただでさえテンションが高かったちゅん助のテンションが、さらに急激に上がっていく。
「ここが勝負だお!」
「絶対に外さぬ!」
「行くお!アスカ派みんな大好き!」
「アスカスキーの名のもとに!」
「式惣不滅は覇者の風よ!」
「白色赤染!時代令和而飛鳥時代!」
「見よ紅組は燃えているか!」
「わしのこの手が光を放つ!美少女掴めと高鳴り唸る!」
「愛と欲望と妄想と理想で現実無視のおおおおおお!」
「フラッシングフィンガあああああああああああ!」
「ブレードおおおおおおおおおおお!」
「突き!突き!そして好きだおおおおおおおおおおお!」
「ポチッとな」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
声ばっかり大きく、大げさすぎる小芝居をすますと、ちゅん助は半ば抱き付くような形で気合一発!照合石にしがみつく。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~!」
気合でどうにかなる条件ではないぞ。そう教えてやるのが友情なのだろうが、恐らくこの男にはこの世界のどんな優秀な薬も現代の最新医学をもってしても手遅れなのだ。気が済むようにさせてやるのが武士の情けという奴だろうか?
「うおおおおおおおおおおおおお!」
ピカピカと照合石が輝きを放つ。
「結果、出ました!」
「キタコレ!!!!」
「旅のお方の望まれる条件に適合されるお方は…」
「お方は…!?」
「お方は…こ、これは!」
案内係が神妙な顔つきになる。
まさか!そんなはずはない!あれだけの無茶でばかげた条件、通るはずがないのだ。
しかしこの真剣な表情はどういうことだ!?
「適合されるお方は…」
「お方は!?」
「続きはウェブで!とかは要らんお!?」
「……」
「……」
周囲に緊迫した空気が流れた。
「誰一人」
「かすりもすることなく引っ掛かりもしませんでしたあ!」
「ズコーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ずっこけたちゅん助が空中で後方3、4回転はしてから頭からカウンターに落っこちた。
スパーン!
「あほか!最初から分かってただろ!ホントにアホか!」
「としか!あんたバカぁ!?とでも言ってもらうか?!」
「ふぁふぁーん!(←泣いている音)」
「わしは今日この日にすべてを賭けていたお~」
「生きる気力を失ったお~…」
がっくりとうな垂れるちゅん助、同情の余地ゼロ…
「うわーん!」
大泣きして同情を誘おうとするちゅん助であった、ここは無視、無視の一手が最上の一手。とっととこちらの用事を済ませておこう。
「連れが大変、大恥…じゃなかったお手数とご迷惑をお掛けしました。彼は病気なので…」
「お気の毒です…そして貴方のご用件をどうぞ」
「病気さらにお気の毒言われたお~うわーん!」
「お前はいい加減黙っててくれないか。俺の方の用事はこいつと一緒なんですが、あんな無茶な条件でなくて」
ガジガジ!
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「イズサン!おにゃのこだぞ!イズサン!」
慌ててちゅん助が俺の頭にかじりつき釘を刺しに来た。
「お前、もうそういうのいいって!」
「あかんぞ~!男はダメ!絶対!」
「しつこい!」
ちゅん助が頑なに男を拒否するのも分かる気はする。大学時代、俺の属していたグループは他人を貶したりする奴も多くて、変わり者のちゅん助を面白がってからかう奴がいたのだ。その時の記憶がそうさせているのかもしれなかった。
当時は庇ってやれなかった俺も責任はあるのだが、それと今とでは状況が違うのだ!
とにかく有用な仲間探しをしないとこの世界では色々不便なのだ。それはちゅん助も分かっていると思ってたが、必要以上にしつこい…
「条件はですね、出来れば…」
「おにゃのこで!」
「俺達と同じ駆け出しから初心者程度の方で」
「可愛いおにゃのこで!」
「長期に渡って一緒に行動して頂けて」
「きれいなおにゃのこで!」
「できれば治癒士系の方か、戦闘系であれば守りの堅い…」
「優しいおにゃのこで!あ!そうだ!イズサン!」
「ベースはおまえが通い続けた撮影会のモデルさんみたいな…神対応でおっぱいのデカいとか言ってた、わしは好みのバストじゃないけど!」
ガシ!
グシャ!
「ぐああ!やめて!机に押し付けて潰さないで!うぐぐ!苦しいおwwwうぐぐ!」
長時間並んだ挙句、ここでちゅん助の茶番を許して時間を無駄にするわけにはいかん!
「まあその程度です!できれば、できればですが、こいつみたいなアホじゃなくてマナーわきまえてるような…」
「承知いたしました、お連れ様とはうってかわっ…いえなんでもないです、それでは照合石に!」
「はい」
俺は照合石に手を触れた。
「イズサン!おにゃのこ!おにゃのこだぞ!お…ぐえあ!力を入れんでクレメンス!うぐっぐ!」
隙をついて照合石に触ろうとするちゅん助をより強く押さえつけて条件を念じる。人の条件に割り込みを入れようとするなど、とんでもない奴だ!絶対に放してはいけない!
ピカピカと照合石が光り出す。無駄な小芝居を入れなかったのですぐに結果が出た。
ちゅん助はどれだけアホな時間を浪費し周りに迷惑を掛けたかと思うと頭が痛かった。まだまだ後ろがつかえてるのだ。
「結果が出ました!」
「コネー!」
「こねー!じゃねーよ!あほ!」
「条件に合うお方は…」
「はい…」
思わず俺も息をのむ。
「続きはCMの…うぐぐ!く、苦しい!」
「うぷぷぷ!」
させるか!ちゅん助よ!茶化すんじゃねえ!俺は両手でちゅん助を捉えると奴の口をキツく塞ぐ!
窒息しろや!
「合うお方は…」
「はい(ゴクリ)」
案内係も焦らすなや!
「ええか?イズサン!こけ方はこうやぞ!?ズコーw!ズコーw!」
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あれだけ押さえ付けていたのにいつの間にか抜け出した!?ちゅん助がカウンターの上で嬉しそうに両手?両足を持ち上げて飛び跳ねていた…
「合うお方は…」
「お一人居られます!女性の治癒士ヒーラーの方です!」
「ズコーーーーーーーーーー!」
ズルッ!ポコ!
人にずっこけ方を指南していたちゅん助が、ずっこける間もなくカウンターから足を踏み外して床に頭から落ちた…
「そんなはずないお!普段から行いの悪いイズサンの条件に合う奴など居るはずがないお、しかも女性などと!」
「お前が言うな!」
「だいたい女性というのはお前がしつこく、くどいくらいに言ってた事だろうが!」
「なんかの間違いだお!なんの冗談!いたずらかお!教会もたちが悪い!」
「色々間違えてるのはお前の方だろうが!あと特別信者のくせして教会さんの悪口言うな!」
「ふぁふぁーん!(←泣いている音)おかしいお!イズサンばっかSSR引くのおかしいお!どっかんてーぶるとかいうやつだお!」
「黙れ!負け犬!」
「は?わしは猫派やぞ!」
友の光明を喜ぶどころか、すかさず足を引っ張りに来る、さすがちゅん助…
「特別信者の証を示して頂ければ、今ならこの方に優先的にお話をお持ちすることが出来ますが如何いたしますか?」
「!」
「!」
「あ~!?あまり事を急ぐのは良くないお!この件は持ち帰って然るべき場所にあげてから検討するおw」
「おい!待て!」
ガシッ!
「は、放すお!イズサン!急いては事を仕損じるんだお!?」
「お前、どうみても足、引っ張りに来てるよな???」
「ち、ちがうお!まだどんな人か分からないお!?ぶっさ!コミュ抜けるわ!とかだったらどうするかお?」
「性格腐れビッチだったらどうするお!?よく考えるんだお!?」
「それに!刻印をこれ見よがしに振りかざして待ってる人の順番抜かしするなんてまさに下衆!外道の極み!」
「……どちらかというとお前が腐ってるように見えるんは気の、せいかな?」
「さっきは特権は振りかざしてこそうんたら言ってたよなあ~!?
「治癒士の方は大変貴重で希少ですので、私も覚えておりますが、優し気な美人の方で受け答えも素晴らしく丁寧な方でしたよ」
「!」
「!」
「出せ!ちゅん助!証を!その隠し持ってる刻印を!」
「待つお!イズサン!綺麗なバラには棘があるお!綺麗な動植物には毒があるというお!わしは危険な臭いがするお!」
「出さんつもりか?ちゅん助君…ちゅん助君は死にたいん?」
「いやいや!イズサン!もしその女がCK!いやPKとかだったらどうするかお!?」
「なんだよ!?それ!」
「サークルクラッシャー!パーティークラッシャーだお!」
「あほ!それならCC、PCだろうが!」
「わ、わしは用事を思い出した、これにて…」
ガシッ!
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命に代えてもここは絶対に逃がさん!
「つべこべ言わんと出してもらおうか?俺が笑って!いる!うちに!」
「うわーん!もうすでに笑ってないお~!」
「ふぁふぁーん!(←泣いている音)無念だお…無念だお…またしてもイズサンだけにSSRが…」
俺は無理やりちゅん助に刻印の承認を受けさせると治癒士への交渉権を獲得したのだった。
「まったく、なんて奴だ!」
「悔しいお、悔しいお…」
「お取込み中申し訳ありませんが、この方はいまガリンから出られておりましてお会いできるのは20日程後となりますのでご了承ください」
「!」
「!」
「わ、わしらそんなに時間ないので…!…ぐえあっ!」
グシャ!
「大丈夫です!待つのは得意なので!よろしくお願いします!」
「あなた方の旅に神のご加護がありますように…」
足元で潰れているちゅん助を拾い上げると、やっとの事で俺達は教会を出た…このゴミはゴミ箱にでも捨てて帰ろうか…
第四話
その3 ちゅん助ごねる!
終わり
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