第28話 第二話 その7 変態耳かき師勝利す!

「………」


「わかった、やめるお」


「え?」


「やめるお」


「え?え?」


「取り出せなくて非常に残念だったお」


「ええ?」


「こんな可憐な少女をいたぶるのはわしの趣味じゃないお」

「やめるお」


「お前、よう言えたな…」


「あの、その」


「メリンちゃん…君は自由を手にしたんだお」

「わしという毒蜘蛛の巣から奇跡的に逃れた美しき蝶よ!」

「おうちに帰るが良いお!」


「いえ、そのですね…」


「わしはやり遂げるつもりであったが」

「こうまで嫌がられては仕方がない…」

「まっこつ無念!無念の極みであるが」

「本人の意思を尊重せねばなお」

「いやーイズサン!」

「腹減ったな!飯でも食いにいくお!」

「イズサンのおごりでw!」


「あの、あの、あのその耳の中の物はどうすれば…」


「は?」

「取らなくていいつったのはメリンちゃんだお?」

「わしは知らんお?」


「そんなあ!」


「いやーあの大物は奥底に潜んでびぃっしりとお張りついとるから!」

「特級耳かき師たるわし以外では取れないだろうなあ」「鼓膜まで引きずりだしてまうかもだお!」

「メリンちゃんの必死な思いが通じて」

「わしはすんでの所で鬼畜に落ちずにすんだお」


「いやどちらかというと現在進行形で外道鬼畜に見えるのは気のせいか?」


「いや、良かった良かった」

「一件落着したところでさあイズサン!」

「帰ろうずw帰ろうずw」


「だめです!だめだめ!」


「おや?メリンちゃん?」

「わしの魔手から逃れたのにまだおったのかお?」

「もう日が暮れるお、ささとお家に帰ろうずw」


「こ、こんな中途半端なの、ひどい!」


「ほう?」

「ではどうしろと?」

「あれほどまで拒否されたわしにどうしろと?」


「っそ!それは…」


「おまえの願いは叶った、そうではないか?」


「だめです!」

「ダメなんです!その…耳の中がゴソゴソして…」

「たまにビリって変な音するし…とにかく」


「とにかく?」


「…い」


「聞こえんお?空耳かな?」


「と…さい…」


「ふふふお嬢さん教えてやるおw」

「心が伝わる」

「なーんて言葉があるがアレは嘘だお!」

「伝えたいならその口で!」

「言葉でハッキリと発しないと!」

「特にその手の要望という奴は伝わらんものだお?」


「焦らすねえ、ちゅん助君、マジ変態」


「おほめ頂き光栄だお!」


「光栄なのかよ…」


「さあ!その口でハッキリと!」


「わ、わたしの…その…うう」


「私じゃわからんお、私とはだれかお!」


「わ、メリンの…うう、グス」


 ここまでのちゅん助の怒涛の変態言葉責めについにメリンがぐずりだした!決着の時は近い!って何の決着だよ…


「自分の要望も言葉にできんとはなっさけないのう!」

「よいわ!」

「ならばわしが見本を見せたるわ!」

「一字一句間違わず!」

「噛みしめて!」

「心して発するが良いお!」

「りぴーとあふたーみー!」


「私、メリンの」

「わ、私、メリンの」


「きったない汚い耳穴にこびりついた」

「うう、きったない汚い耳穴にこびりついた…」


「びっくりするほどでっかい」

「びっくりするほどでっかい、いやあ…」


「汚れの蓄積した塊」

「汚れの…蓄積した塊…」


「巨大な耳クソを」

「巨大な耳…ソを、ダメ」


「根こそぎ取って」

「……根こそぎ取って」


「いやらしい私を」

「そんな……い…やらしい私を」



「カンプなきまでに!」

「か…完膚、なきまでに」


「やっつけてください!はーと」

「やっつけてください!♡」」


 スパーン!

「イターッ!なにするお!?イズサン!」


「いや、すまん、あまりにあれだったのでつい…」


「まあ良いわ!メリン!覚悟は決まったな!横になれお!」


 ちゅん助はメリンを引っ張るように地面に促す。もはや大した抵抗も出来ずメリンは力なく地面にひれ伏した。


「もはや駆け引きは必要ないわ!ろんぎぬすの槍!リフトおふ!」

「ろっくおん!完全に捉えたお!チュンシア!目標を引き剥がす!」


 ちゅん助は棒の先が二股に割れた耳掃除道具をメリンの耳穴にズズーと奥深く挿し込むと不気味な笑みを浮かべながらゆっくりゆっくりと棒を回転させ始めた。


「嫌でも聞こえるな?」

「ベリベリ剥がれる音が!純潔とお別れする音がッ!」


「ちゅん助…お前、変態だな…」


「ああ!やあ!だめえ!」


「ふふふ遅いわw」

「今さらもう何を言っても遅いわ!さあとどめの時間だお!」

「憧れの君に別れを言いなあ~w!」


「なんでだよ!」

「ちゅん助…お前、変態だな…」


「くらえ!天馬ろーりんぐあたっく!ベリベリべりベリベリ!」


「アッああ、アッアア!アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、イヤアアアアアアアアアアアアア!」


「そしてズボボボボ!だお!」


「はうッ!もう…ら………め……………♡」


「でたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!wくっそwクッソデカい耳クソだお!w」


(でかい…)


 ちゅん助がメリンの耳から引きずり出した獲物は確かにデカかった、見たことない位…まあでも耳クソというより皮膚の薄皮が剥がれただけに見えるのだが、指摘したところでちゅん助の事だ、耳クソだと言い張るに違いない。


 正直あほらし過ぎてそんな気も起きない…


 メリンに目をやると半失神状態で起き上がる事も出来ずにピクピクと痙攣していた。失禁しなかっただけでもましなのか…


「ふふふメリンちゃんこれで右耳はつるっつるのピッカピカ!」

「その可愛い顔に似合った美しい耳となったお!」

「数々の試練に耐えよくぞここまでたどり着いた!」

「一級耳かかれ師の称号を与えるおw」


「あんのかよ、そんな称号!」


「ああ…あああ…ああ…」


 メリンは言葉にならない言葉を発しまだ震えていた。


「メリンちゃん今日のお代は結構だお」

「だが忘れるなお、耳の穴は二つある!」

「左の耳には穢れが潜んでないと」

「よもやそのような事!思うでないぞ!」

「断言するお!むしろ!左の方がびっしり!ビシビシ!だお!」

「左の耳も美しくなりたかったら」

「またいつでもわしの所へ来るが良いぞ?」


「来るわけねーだろw!」


「来るが良いぞ!」


「来ねーだろー!」


 ちゅん助の言葉を背中に受けながら、ようやく立ち上がったメリンは夕暮れの道をよろよろと腰抜けたような体勢でヨロヨロと帰っていった…


「いやーwわしの耳掃除テクニック凄かったおw?」


「あほか!お前なにやってんだ!」


「なにって見ていたお?健全なるわしの耳掃除」


「どこが!だよ!」


「本日、五戦全勝と」


「五ぉお!?」

「お前!」

「あんなこと五人もやったのか!」


「本日!この町には!」

「この世界で最も美しい耳穴を持つ麗しき少女が!」

「五人も誕生したおw」

「片耳だけwww」


「呆れたわ…狩りにも付いて来ないから何やってるかと思えば…」


「ふっ!」

「わしは誰かの後を付いて行くような生き方はせぬわ!」

「道なき道を!」

「穴無き穴を掘り進むw!」

「わしは耳かき伝道者だからな!」


「初めて聞いたわその設定…」


「mytubeで耳掃除動画見まくってた経験が活きたお!」


「あんま活かされたように見えませんでしたが…」


「これからだお、これから!ふふふ!」


「あんなことしてお前あの子らがまた来るとでも思ってんの?」


「来る!必ず!耳かきは麻薬だおw」


「どっからその自信が!てかダメ、麻薬、絶対!」


 ちゅん助が俺の居ぬ間にあのような下品な耳かきを少女達に施していたとは!止めさせた方が良いのだろうか?しかし卑猥…に聞こえる言葉を言ってただけで法律上でも禁止されてないような気もする。


どうしたものか。

 それにしても…


「いやそれにしても、あれデカかったな」

「あんなん、初めて見たわ」

「あんなの…」

「この世界の女性って耳掃除とかあんましてないのかな?」


「は?」

「どの子もみんな耳は綺麗なもんだったお?」


「は?だって今のあれ!尋常じゃ…」


「あれ?ああ…」

「あれはわしが作った」


「ああ作ったのか‥‥‥‥つくった!!!???」


「オブラート知っとるお?」

「市場で芋やらお米なんか仕入れて」

「お酒から抽出した速乾性アルコールに溶かして」

「耳掃除に入る前に綿棒で耳穴の壁に綺麗に塗り付けておいただけだお」

「あとはテキトーにおしゃべりして乾いたら剥がす」

「そんだけw」


「な!ななな、お前…ズルじゃん!」


「だまるお!」

「くっっっそ!でっかいのが出んとつまらんからな!」

「わしもお客さんも!」


「なんちゅう!」


「特級耳かき師は出ないんじゃない!」

「いかなる状況下でも出す!んだお!」

「無から有!」

「まさに錬金術!」


「種も仕掛けもある件…」


「いやーみな良い反応だったおw」

「あんな声、峰ちゃんにくわらせて!」

「絞り出させたら脳汁ドバドバ出るお?」

「いやいや他の汁も出るかもだおw」

「エロい時代になった、そうは思わんかね?」


「ちゅん助…お前、変態だな…あとくわらせてじゃなく喰らわせてな…」


「さあ明日から忙しくなるおー」


「まさか!」


 ちゅん助は今日ちゅん助が弄んだ?少女達がまた自分の元にやって来る、そう思っている様だった。あんなことして彼女達が再びやって来るなんて俺にはとても思えないのだが…


 第二話 

 その7 変態耳かき師勝利す!

 終わり

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