第14話 第一話 その4 クラッシュ!

「さておき私服撮影会の件だが」


 もうその話はどうでもよくなって終わったんじゃないのかよ?あちこち飛び火するちゅん助の話…ま~た先程の話題を蒸し返してきた。


「イズサン、ま~た凄いカメラ買ったなお~w?」


「お?よく分かったな?」


「お見通しだおw最高のカメラで最高の被写体撮りたいんだお?」


「まあ…そうだが…」


「なのに私服w」


「それはもういいて」


「で、今度のはどんなカメラだお?」


「よくぞ聞いてくれました!国産トップメーカーカイオン製初のフルサイズミラーレスカメラだ!」


「おお!フルがサイズで、ミラーがレスなんだお!すごいお!」


「前半が違うような気がするが…まあそんなとこだ」


「でレンズは最大何mmかお?」


「200mmだな!」


「ぷぷw200!?わしのミコル製のズームは3000mmやぞ!」


「あほか!お前のカメラは豆粒みたいな極小センサーの玩具カメラだろうが!」

「それに比べてカイオンのはフルサイズの極大センサーに専用レンズ、プロも使ってる奴だぞ!」


「で、最大何mm?」


「だから200だって!」


「200!wわしのカメラの勝ちだおwww」


「だ!か!ら!お前のは高々5、6万の玩具やろ!俺のはカメラもレンズも30万オーバーのプロも扱う代物!格が違うの!」


「でも200!そんな水鉄砲みたいな有効射程w届かなければどうという事は無い、キリッ!わしの勝ちだおw」


 キリッ!じゃねーよコイツ!大体お前のズーム至上主義は岡山のサーキットでしつこくレースクイーンの下乳撮ってたらとっ捕まってこってりと説教された結果だろうが!ダメだコイツ、早く何とかしないと!


「話にならんな!!!!」


 ギューーーーイーーーーン!


 毎度毎度のちゅん助のおふざけに少しイラっとした俺はアクセルを床に着くまで踏み込んだ。


「うわわ!?乱暴運転止めろだお!ガソリンばら撒き暴走イクナイ!」


「ふん!ぶつからなければどうということはない!そうだろ?」


 お返しとばかりに吐き捨てると俺は車をさらに加速させた。


「ひえー止めてクレメンス!止めてクレメンス!」


「玩具カメラと認めたら止めてやるメンス!」


「クレメンスになってないおwひえー!イズサンがカメラ対決で負けた腹いせに暴走してるンゴwたーすけてーw」


「まだ言うか!それなら!」


 全く反省の色を見せんなコイツ!ここは少しお仕置きをしておかねばなるまいて!スピードを保ったまま先行する大型トレーラーの真後ろに急激に車を近付けた。


「あかんて!アカンて!ぶつかるぶつかるううううううううう!」


「ほれほれおもちゃだと認めてクレメンス!これでいいんだろ!」


「ひえーカメラで負けた腹いせに神風特攻かまされて死んだおwww短く情けない生涯だったおwww」


「おーまーえー!この期に及んで!ならこうだ!」


 グググ!ゴオオオ!


 俺は車内にトレーラーのエンジン音が響く接触限界ギリギリまで車を寄せた。


「アカンて!ア!?」


「エ!?」


 ガシャ!


 ちゅん助が2回目のアカンを言い終える前にトレーラーのブレーキランプで視界が真っ赤に染まりガシャという音は車という鋼鉄の塊が接触した割には軽い響きだと感じてしまった。


(しまった!)


 そう思った瞬間に慌てて急ブレーキを踏むがフロントをぶつけてバランスが崩れた状態で急制動を行ったため車のコントロールが困難な状況に置かれてしまっていた。


(まずい!…)


 瞬間的に身の危険を感じたその時、バックミラーにまばゆいばかりの光が飛び込んで来た。



 プアアアアアアアアアアーーーー!



 後続車のクラクションの大音響が響いてくる!確か後続車も大型だったはず!その事実に気付くと全身が凍り付いた!


「これは死んだお!!!!!!!!!!!!!!!!」


「!」


 これが記憶に残る最後の言葉…


 記憶に残る最後の映像はボンネットがラップフィルムみたいにいとも簡単にめくれあがってあっという間にフロントガラスを覆った悪夢のような光景だった…


 ちょっとふざけただけのつもりなのに、ああ、やってしまった…


 俺達はどうなったんだ、たち…?俺達?ち、ちゅん助は!?彼はどうなった!?


 アア…神様…




 第一話 

 その4 クラッシュ!

 終わり

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