009 ポスト・ポストアポカリプス
「嘘だろ……」
今正に自分が立っているのは異なる時代、異なる星の大地。
そのような話を即座に受け入れることはさすがにできず、男は呆然と呟いた。
しかし――。
「残念ながら本当のことだ。そして、お前達はここで生きていくしかない」
キッパリと言い切る門番が現実逃避を許さない。
とても嘘を言っているようには思えない口振りだ。
男は二の句を継げなくなり、そのまま考え込むように俯いてしまった。
「……失礼ながら」
代わりにアテラが一歩前に出て、女性的な機械音声で割って入る。
「それだけ未来なら、空間跳躍や時間跳躍といった技術があってもおかしくないのでは? むしろ、そのせいで私達は転移させられたのではありませんか?」
その問いに門番は「ほお」と感心したような表情を浮かべる。
「随分と旧式の機人だと思ったが、再構成のおかげでAIの性能が上がったのか」
「……質問の答えは?」
アテラは侮りと受け取ったのか、少しムッとしたように険しい声を出した。
「気分を害したならすまない。だが、まあ、答えとしては半分正解ってとこだな」
「半分?」
「確かに時空間転移技術は存在していたし、お前達が転移したのはそれのせいだ」
「なら――」
「最後まで聞け。その装置は暴走し、制御できる状態にない。それによって当時の進んだ科学技術も大半が失われている。過去の地球に戻ることは不可能だ」
どうやら、いわゆる
見た感じ、既に最低限の復興は済んでいる雰囲気だ。
……勿論、門番の言葉を額面通りに信じるなら、の話だが。
「まあ、信じる信じないは勝手だ。ここで暮らしていけば嫌でも分かる」
男の不審を感じ取ったのか、彼はそう苦笑気味に告げる。
いずれにしても、自分の力で多角的に情報を収集できるようになるまでは、一先ず今までの話を前提として行動するしかないのは間違いない。
「……とりあえず、生活は保障してくれるのか?」
「それはお前達次第だ。この街の方針は、働かざる者食うべからず、だからな」
別の方針を取る街もある言い草だが、他に行く当てなどない。
一先ず生活基盤を整えて、情報を収集しなければどうしようもないだろう。
SFファンタジー染みた状況にありながら世知辛いものだ。
ブラックな環境でないことを祈らざるを得ない。
「……せめて職の斡旋ぐらいはしてくれるんだろうな?」
「それも能力次第だ。そろそろ簡易適性試験の分析結果が来ているはずだが……」
「簡易適性試験?」
「ここに来るまでに機獣……機械でできた狼に襲われただろう? あれは稀人の能力を確かめるために行われたものだ」
「な――」
問いに対してサラリと告げられた答え。
その内容に絶句し、一瞬遅れて勝手に試されていたことに怒りを抱く。
しかし、男が明確な反応を示すよりも早く。
「何ですって?」
アテラがそれ以上に激しい憤怒を滲ませた声を発し……。
男はその余りに強烈な気配に圧倒され、己の胸に渦巻いた感情と開きかけた口をどうすればいいのか分からなくなってしまった。
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