第11話 この子は何者!? その2

 俺はその間にテーブルの片付けをする。

 何だか、何時もと違う様な気がするが、とにかく片付ける。

 台所で洗い物をしていると、ドアが開いてその子が戻って来た。

 しかし、その子は不思議そうな顔をしていた。


「どうしたの?」


「おかしいな……。どこも怪我をしていなかった……?」

「気のせいでは無い筈なんだが?」


 その子は首をかしげている。


「怪我をしていなければ、良かったじゃないか!」

「本当に怪我をしていたら、病院に連れて行かなければ成らないし」


「そうだけど……」


 本来なら喜ばなければ成らないのに、その子は不満そうに言う。


(怪我をしていなくて良かったけど、そろそろ帰って貰わないと…)


 俺は洗い物を一旦中断して、その子の家の事を聞いてみる。


「ねぇ?」

「君の両親に連絡をしたいのだけど、電話番号とか分かる?」


「電話番号?」

「そんなの私の世界には無いよ…」


 その子は冷静に答える。


「いや、いや、そんな訳無いでしょう!」

「外国人でも無さそうだし、言葉も理解出来ているし、君がどんな理由でこの家には入り込んだかは知らないけど、そろそろ帰ってよ!」


 俺がそう言うと、その子呆れ顔をしていた。


「あなた……。何も理解していないの?」

「こっち来て!!」


 その子はそう言うと、俺の腕を引っ張って台所から部屋の方に向かう。

 部屋に入りその子はテーブルの端に指を差す。


「……見て解らない?」


 俺はその子の指差した方を見る。

 そこにはたしか……、置き人形が置いて有る場所だが、人形の姿は無く土台しか無かった。


「あれ?」

「人形が無いね!」

「どこかに転がってしまったか!?」


 俺はそう言って、人形を探し始めようとすると……


『ドコッ!!』


 俺の尻に向かって、その子は蹴りを入れて来た。


「ちょっ、ちょっと、何するの!」


「正輝!」

「まだ、見て分からんのか!!」


 その子は怒りながら言う。


「えっ? 何が……」


「私はここに居るよ!!」

「本当に気付かないの!?」


「えっ、うん」

「君は居るよね……。それより、人形を探さないと!」


「あんた、本当に頭悪いね!」

「私の格好が、人形に似ているとは思わないの!?」


 その子がそう言うので、俺はその子をまじまじと見ると、何だかそんな気もする。


「似ているね……でも、まさかね!?」


 俺の心の中でよぎる。まさか本当に、人形が人に変化をしたのか!?

 そんな訳有るか!!


 そんな事が本当だったら、異世界シリーズがみんな現実に成ってしまう!

 人形が人に成る位だ。チート・魔法・異空間移動も出来ない事無いだろう。

『絶対にこれは嘘だ! 夢だと!!』と自分に言い聞かせた。


「まぁ、あなたが信じるか信じないかは別にして、私は眠らせて貰うわ」


 その子は淡々と言って、敷いて有る俺の布団に潜り込む。

 当然だが布団は1組しか無い。その子が俺の布団に寝てしまったら、俺の寝る場所はカーペットしか無い。


(これが冬の時期で無くて良かったよ…)

(真冬にこんな事が起きたら、とてもじゃないが寝られない!)


 クローゼットから毛布を引っ張り出して、その子が寝ている横で毛布を羽織って寝る。

 俺の借りている部屋は『1K』だから他の場所には部屋は無いし、部屋自体もそう広く無いから、離れて寝る事も出来ない。


(きっと、明日の朝起きたら、あの子は消えているんだろうな……)

(飲み過ぎて現れた幻覚だと、俺はそう信じながら眠りに就いた)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る