マイ フィロソフィ 3 最後の恋
夏目義之
第1話 いつもの日常
ア マイ フィロソフィ 3 最後の恋
夏目 義之
1章 恋の始まり
春の草木が萌える、春。新しい命がつま先立ちで自身の生命を輝かそうとしている春の山に僕は自転車で登校していった。
春の山は何か起こりそうな期待に膨らむ山だった。なにもないけど、何か起こりそうな気がする。そんな期待が自然な形で膨らむのだ。
そんな山の通学路を駆けていく中、檸檬(れもん)の日光にばったり会う。日光は最初はおずおずとしていたが、もう人見知りの期間が過ぎたのか、今は爽やかな笑みで僕に挨拶を返してきた。
そんな檸檬に挨拶を交わして、通学路の途中にある赤信号の下で見覚えのある長いつややかな髪を持つ美少女を見かけた。
「美春」
その見覚えのある髪の人が振り返る。振り返った少女はふっくらとした頬(ほほ)と大きな目を持ち、笑うとひまわりのような明るさを持った正真正銘(しょうしんしょうめい)の美少女だ。
「美春、おはよう」
僕の挨拶に美春は齧歯類(げっしるい)の笑顔を返した。
「おはよう、一樹」
「良い天気だな、今日も」
「うん、そうだね」
彼女、寺島美春は長いストレートの黒髪とふっくらとした頬(ほほ)、丸い大きな目、160ぐらいの身長、まさしく今風のアイドルのような顔立ちそれが美春だ。
しかし、僕は美春を恋愛対象としてみれない。一時期見ていたときもあったが、それはあまり美春と知り合いになっていないときに勝手に彼女に恋をしていたので、知り合いになって、友人になるとその幻想がするすると溶けていったのだ。
校内の美春の人気は詳しくは知らない。ただ、知り合った人はあまり恋愛感情を持たず、主に美春から遠い位置を持った男子は好きになったということをちらほら聞く。
ともかく、僕らが世間話をしていたら、信号がぽっと青になる。いままで固まっていた蟻(あり)の塊が、ぞろぞろと動き出した。
僕達も動き出しながら世間話をする。
「民主党の代表選挙が始まるし、自民党も谷垣おろしがでているな。今の時期に内閣不信任案がでたことにたいしてどう思う?
僕自身は消費税増税をした民主党もくだらないと思うし、その法案に賛成した自民党もくだらないと思う。法案に賛成してから内閣不信任案を出すこと何て、自民党が官僚の言いなりになっている証拠だな。官僚はとにかく税金を徴収できればあとはどこまでもちょろまかそうという魂胆(こんたん)なんだからな、本当に自民党は官僚の言いなりで民主党もそうだし、その民主党が今度は議員改革のために比例区を80削減をする法案を出そうとしているんだから、確実に腐ってる。
小選挙区は複数の候補の中から一人を選んで、当選させるという物で、僅差で2位の人がでても切り落とされる国民の票が死んでしまう、死票が出るのが多い選挙方式だ。
翻って(ひるがえって)、比例代表選挙区は個人に票を入れるのではなくて政党に票を入れる。そして、票が入れられて一番多い物から一番に投票して、当選した党の票を割る。そして割ったあとで次に多い投票数から選ばれる。
いろいろと比例代表制もあるがドント方式だと、小選挙区票入りも死票が少ない。だが、僕が言いたいのはそれだけではない。先にも言ったけど、自民党も民主党も官僚の言いなり、これからは2大政党制によらない政治が重要だと思う。
日本では昔は何人もの人が当選した中選挙区が普通だったが、中選挙区や比例だと幅広く人を当選させるからなかなか一党独裁になりやすい。それを民主党が日本でも政権交代をさせることが重要だ、と言って、小選挙区制を強く進めた。
だが、果たしてそれは必要だったのか?自民党は全く責任ある政党になっていないし、民主党も官僚によって骨抜きになった。それなのにまだ2大正当性が必要なのか?どちらも官僚によって骨抜きにされたら全く国民の方に目を向けずに政治を行っている。こんな2大政党制を維持する必要があると思うか?僕にはないと思う。
もちろん多党制もいろいろ不安定性があるのは事実だが、それにしても小選挙区300,比例代表180は差が多すぎる。それをまた80議席を減らすって、頭がおかしいか、それか確信犯的に自分の権益を守ろうとしているか、野田政権はそのどちらかだろ。どう思う?美春」
それに美春は玉虫色の笑顔をした。
「いや〜、私はもっと民主党に頑張って欲しかったよ。税と社会保障の一体改革をさ。やっぱり、今の日本は年金も不安があるし、若者が守られてないじゃん?日本は年功序列の形式があったから、あとで出世することを前提にしてるから、若者には全く金をかけていないのがすごく問題だよ。それを打破するために消費税増税はとても意味のあることだと思うよ。だから、意味のあることだと私は思うな」
「しかし、今は不景気だぞ?不景気の時に増税をしたら景気が悪化してしまうじゃないか。それなのに増税をする意味はあるのか?それに国家規模でそれほどまで増税をして、官僚達がどう使うわかったものじゃないだろ。うやむやにされるかも知れない。
それほどの危険性があって、まだ増税をするのか?リスクが多すぎると思うし、美春の言うとおり、増税した分を若者のために使うというのはそれはそれでいいことだと思うが、社会保障に5パーセント使うと言っているが具体的にどう使うのか不明なままだ。それなのに増税に賛成する理由がわからない。内訳を全く言ってなく、5パーセントを社会保障に当てると言っているだけだからな」
「いや、それは。でも、自民党よりは良い政策を出してると思うよ。もう、自民党は終わりだし、それよりはまだ期待が持てるんじゃないの?」
美春は華やかなバラの下でトゲがかすかに隠れているように話した。
そんなことを話しながら、しかしもう学校に着き、自転車を閉まってまた徒歩で教室に目指した。いろいろ反論する箇所(かしょ)もあるけど美春は不機嫌(ふきげん)そうだし、今はやめておくか。
「ところで、うちら4人が同じ組になれたのがすごい偶然だな。高校3年生になったけど、3ーAだったけど、美春は同じ組になって何かやりたいことがあるか?」
それに美春は綿花のようなふわふわした曖昧(あいまい)な笑顔を見せた。
「え〜?特にないよ〜。私自身、ただ一緒になれてうれしいからさ。やっぱり私たち4人だとやっぱり良いね。なんか、しっくり来るよ」
「僕自身は4人一緒になれて文化祭とか楽しくなるな、と思うし、学校にも来やすくなるな。僕はあんまり学校が好きじゃないから、正直言って助かってる」
それに美春は満面の花鳥風月を咲かせて僕を迎えた。
「そうだよね!そうだよね!やっぱたのしくなるよね!私たち4人が一緒になってさ、楽しい物がもっと楽しくなるよね!ああ、文化祭楽しみだな〜」
美春は黄色い活発な声にひとしずくのメープルシロップをかけていた。
そんなことを僕らが話しながら教室に着くと、噂(うわさ)はなにやら、金色の髪を持った女神のような女子が一人教室の前を立っていた。
「リーンちゃーん!!!!」
そして、ジェット噴射のようにその女子に猛進する狸(たぬき)が一匹。やれやれ、ほんと仕方ないな。
むこうもそう思っていたのか、肩をすくめる。
まあともかく、僕達はもう一人の友人、キャサリンと合流して、教室の中へ入っていった。春の光りが僕らの進級に無関心そうに降りていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます