第2話

昨夜のオールがたたり、横になった俺は

すぐさま、睡魔に襲われて眠ることとなった。


さて、時戻して。


どの位の時間、寝ていたのか不明だが、

モゾモゾ、という変な音が耳横でして、

俺は目を覚ましてしまったわけだが。



何故か、マドンナが俺の真横に居て、

スースーと寝息を立てている件。


俺は困り、


「お、おい..」.と呟いてみた。



全く動じず、眠っているので、

俺はおそるおそる、手を伸ばし、彼女の肩を揺すってみた。


「ん....」


これで、よーやく目が覚めたみたいだった。


こんなところ、

保健室の先生に見られたり、誰か他のやつに

見られたら大問題になる。


俺はこそこそと小声で彼女に告げた。


「ちょ!ちょっと何やってんの?

なんで、俺のベッドに潜り込んできてんの??」


寝ぼけ眼で、目をトロンとさせて、

マドンナが言うことには。



「あのね、私ね、誰かが添い寝してくれないと

よく眠れないの...」


「昨日は、テスト勉強を夜遅くまでしてて、

なかなか眠れなくて。実はね、

山吹くんが倒れたすぐあと、私も何故か倒れてしまったの」



「えええ!そんなことある?」


あくまで小声で驚いてみせた。


「そんなこと言ったって!俺がいるベッドに潜り込んでこないで!保健室の先生とかに見られたら、

ヤバイっしょ?それに、他のひとに見られたら、変な

噂立てられるよ」



「変な噂?」


「た、例えば、俺らつ、付き合ってる、とか?

学年一の陰キャ男と学年一の陽キャであるマドンナが

できてる、とか....!嫌でしょ?そんな噂立っちゃったらさぁ!」



「別にいいわよ。付き合ってるって噂が流れても」


「な...!何言ってんの!」


「あのね、取り敢えず、今、大体、16:00ちょっと過ぎた頃。

保健室の先生は、ついさっき、職員会議に行ってくるから大人しく寝てるよつに!って出て行ったわ」


「一時間は戻って来ないわよ。おそらくね」


「この状況、見られるとしたら、生徒よね」


「だ、だから、見られないうちに、となりのベッドで大人しく寝ててよ」



「嫌よ」


「なんで?」


「だって、山吹くんを、惚れさせるまで出てかないわよ」


「な...!」


「大体ね、今まで、私の隣席になって、惚れさせられなかった男はいないのよ!皆無なのよ!

それなのに!あなたときたら、ぜんっぜん、私に興味示さないじゃない!」


「顔赤くもならないじゃない!

あまりにも悔しいから、こーやって、頑張って

惚れさせよーとしてんのよ!!わかる?」


「え、えーと...」


「私、知ってんのよ!みんなは陰キャ男って、あなたのこと馬鹿にしてるけど、眼鏡外したら男前なこと!

それからね!この前の全統記述模試、全国一位だったってことも!!」



「普段は赤点ギリギリだけど、

本気を出せば、東大A判定って噂...!

本当だったのね!」


そう言いながら、彼女は、俺に馬乗りの体勢になり、俺のメガネを外しにかかった。



「や、やめろ...」


対抗するもむなしく。


俺のメガネは奪われて、何にも見えなくなった。


「ほーら、イケメンじゃない!!」


気が付けば、彼女にキスされ、


数分後。



ふたりしてハグして睡眠をとる羽目になった。


やがて。


小一時間が経過した頃。


俺も彼女も体力が回復し、


保健室の先生が戻って来る前に、

保健室をあとにすることができたのでした。



この日の翌日。


前日、マドンナと一緒に手を繋いで帰っているところを

何人かの生徒に目撃された結果、




何故か陰キャとマドンナが付き合いだした、って噂が学校内を駆け巡ったのでした。



思い返せば、マドンナは俺と隣り合わせの席になってからというもの、やたらと制服のスカートを短くしたりしていた。


もう、椅子に座れば、

ショーツが見えるんじゃないかって、くらい

短くなってた。


だから、周りの男子はやたらと色めき立っていたし、

隣の席の俺を、やたらと羨ましがってた。


「いいなぁ、マドンナの隣でよ。

あんな可愛い顔を間近で、毎日拝めるなんて、

羨ましいぜ」


「そ、そーかな」


「そーだよ、ったく、お前は二次元の女の子が好きだもんな」


そう。俺は三次元より、二次元の女の子が好きだった。


中学生のとき。


俺は女子の嫌がらせに遭っていた。


バレンタインともなれば、小さな釘が何本もいれられた手作りチョコを「好きです、受け取ってください」と渡され、その

翌日に、「私があんたのこと好きとか、

絶対ないから!勘違いしないでよ!

釘入りチョコ、美味しかったかな??」とみんなの前で大笑いされたこともある。


女子の、罰ゲーム告白の相手として、俺は

必ずといっていいほど、名前が上がっていたんだ。


そんなトラウマからか、

俺は現実世界の女子が苦手だった。


だから、席替えでマドンナが、

俺の隣の席になったときも、

別段、気にせず、他の男子みたく、

わーわー、騒ぐこともしなかった。


それでも。マドンナは僕に対して、


「山吹くん、おはよう」


「山吹くん、また明日ね!」


以前よりも増して、そんな挨拶をしてくるようになってた。それも飛び切りの笑顔を添えて。



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