第23話 復讐者リベン、因縁の相手と再会する

 リベンがゴブリンを畑に埋めてから、一日が経過した。


 ゴブリン畑は勇者パーティ最高幹部の一人ボウのアジトになっていた。


「なんでだよぉおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ロークスはそれを見て思わず絶叫した。


「えっ、えっとこれは?」


「ここがボウのアジトか…手間かけさせやがって…!」


「あ、あのぉ…」


 流石のフラムも困った様子だ。


 それはついさっきまでゴブリンが大量に埋められた死屍累々の場所が急に立派な建物になったからだ。


 摩訶不思議にも程があるだろう。


「このザギグの街で最も復讐したい奴がここにいるんだ。アレックスよ…こいつを消されば、お前もただじゃおかないだろうな」


「いや待てよ。この状況に対しての説明はねぇのかよ!」


「うるせぇええええええええええええええええ!!」


 リベンはやっぱりロークスを殴った。


「何で!!」


「人が真剣に語っているのに水を差すやな!!」


「理不尽すぎねぇか!?」


 ロークスがリベンの攻撃に抗議をしたときだった。


「ふっふっふっ、相変わらずだな。リベン」


 何者かの声が屋敷から聞こえた。


「その声は…ボウか!!」


 リベンがそう言うと、ボウと言う男が魔法による投射によって姿を現した。


 だが、その姿は目深い外套を身にまとっているためか、その全体像は見ることができなかった。


「会えて嬉しいよ、リベン。同期のお前とこうしてまた会えることによぉ」


「ほぅ?コザ、カイステ、ビチの三人におれを追放するように指示したのはお前と聞いたが?」


 リベンが嫌味たらしく言うと、ボウは笑いながらこう言った。


「何のことだ?あれはあの無能ゴミ屑共が勝手にやったことだ。同じ二刀流剣術としてとして、俺はお前にもう一度パーティに戻ってきてほしいのだ。プレゼントはもう受け取っただろ?」


 ルミエはその言葉にはっ、とした。


「まさか、エルミアって人に殺し屋を依頼したのは…」


「賢いな、娘!その通り!このボウがあの無能ババアに制裁を与えてやったのだ!!感謝してくれ、友よ」


 ボウの恩着せらしい言い方にリベンはこう返した。


「悪いな。おれはかつてのパーティにいた頃からコザ以上にお前が憎かった。その恨みを命で償ってもらわなければ、おれの復讐心は収まることはない。もちろん、アレックスもだ」


「ほう、俺がお前に何をしたんだ?…いや、待て!あの時のことか!!」


「!!やはり、貴様は覚えていたのか!」


「ああ、それはお前と共にアレックスのパーティに入ったときのことだな…」


~◆三年前◇~

 これはかつて勇者パーティが伝説の迷宮「レジェンド」を踏破する前の話だ。


 冒険者を志したリベンは当時無名の冒険者であったアレックスのパーティに入ろうとしていた。


「すいません、未経験で年齢不問って聞いて応募してきたんですけど」


 リベンは冒険者になるため、アレックスのパーティに入ろうとしていた。


 当時のアレックスのパーティは四名と若干名であり、主力格のレベリオなどはまだ入ってはいなかった。


 アレックスはリベンの姿を一目見ると、嫌そうにこう答えた。


「いや、無理っす」


 その一言を聞くと、リベンはカチンときた。


「いや、ここに未経験で年齢不問って書いてあるじゃないか」


 その言葉にアレックスはため息を付くと、こう返した。


「自分は普通の人間が欲しいだけだ。お前のような色物なんて雇っても仕方がないだろう?」


「試してみるか?」


 アレックスの言葉にリベンはそっと刀を抜こうとした。


 その時だった。


「ほう、二刀流使いがまさか同じパーティに入ろうとしているとはな。しかも、歳が近いと見た」


「何者だ!!」


 アレックスがそう言うと、その者は姿を見せた。


「俺の名前はボウ。倭羽羅刃二刀流の使い手だ」


 ボウはそう言うと、姿を見せた。


「そ…その姿は…貴方は…」


 ボウはかつて数多のパーティを追放された男であり、非常に暴力的な行為が多いため、何度も城の地下牢に放り込まれたれっきとした犯罪者だ。


 その反面、実力は非常に高く、ミノタウロス退治など伝説を持った男だ。


 だが、趣味が弱い者いじめということもあり、彼を忌避する冒険者も少なくはない。


「倭羽羅刃二刀流だと…」


「ほう、その嫌そうな顔…さては、お前は芭啞火保二刀流の使い手か」


「その流派は芭啞火保二刀流を破門された者が腹いせに立てたという剣術だ…!!」


「無個性の癖に詳しいな、流石は本家様だ」


 ボウはにやりと笑うと、アレックスの方を向き、こう言った。


「リーダーさん。このイキリズバ太郎とハンサムフェイスの俺を入れてくれ、『レジェンド』の突破に協力してやるぜ」


 かなりの上から目線の言い分だ。


 だが、ボウは刀をチラつかせて、アレックスを脅すようにも見えた。


「わ、わかった。二人とも歓迎しよう」


 ボウがその言葉を聞くと、手を叩いて喜んだ。


「よくぞ言ってくれた!ところで我が同期よ!お前の名は何と言うんだ?」


 ボウの高慢な物言いにリベンは機嫌悪そうにこう返した。


「リベンだ…リベン・アヴェンジヤンだ…」


「ふっ…これからよろしく頼むな」


 だが、この後ボウはリベンに壮絶ないじめを繰り返した。


 町のチンピラであるコザや詐欺師のカイステ、そして嫌われ者の貴族ビチをパーティ入れ、ひたすら彼の成果を奪っていった。


 彼は毎日のように「使えねぇな」とか「無能」などと罵声を浴びせ、三人にリベンをパーティから追放するように仕向けていた。


 わかりやすく言えば、彼ら三人の仕事をリベンにわざと回させてたのだ。


 当然、仕事を奪われた彼らはそのことに焦りを感じたのだ。


 それでアレックスを筆頭するトップ陣に彼が無能であると、ことある事に彼の手柄を横取りしたり、追放するように言ったのだ。


 ボウはただリベンを虐めるためにアレックスのパーティに入れたのだ。


~◆現在◇~

「…ふっ、懐かしいな。かつて、おれはお前と一緒にアレックスの下についたんだっけか」


 ボウは笑いながらそう言うと、リベンは怪訝な顔をしてこう返した。


「いや、お前がクソって点しか合ってない。実際は…」


「えっ」


 そして、リベンはかつての出来事について語りだした。


~◇三年前・リベン君(三十八歳)の場合◆~

 底辺冒険者であったアレックスは疲れからペットショップに来ていた。


「バウバウバウバウ!!」


 そこにはたくさんの売れ残りである筋肉ムキムキの男たちが鳴いていた。


「うわああああああああああああああ!!きめぇええええええええええええ!!」


 アレックスより先に入った男が猛スピードで店内から出た。


「うわぁ!!」


 アレックスは思わず転げてしまった。


「大丈夫か?」


 一人マッチョがアレックスを手を掴んだ。


「あんたは?」


「おれはリベン・アヴェンジヤン。無職だ」


「えっ、マッチョで無職とかきもっ」


「えっひどいわっ!!」


 アレックスの一言に傷つくリベンであったが、その様子を見ていた男がいた。


 そう、ボウだ。


「うん?あの男パワハラしがいがあるな…」


 ボウはペットショップのマッチョたちにパワハラを止めると、リベンの方へ歩き出した。


「そこの奴。フリーか?」


「ええ、ああまぁそうだが?…って、ええええええええええええ!!」


 ボウはその言葉ににやりと笑った。


「ほぅ、俺がハンサムフェイスすぎて驚いたか?」


「い、いや!あんたその姿!!」


「ふっ、無理もない。冒険者の間ではありとあらゆるパーティを追放され、札付きの前科者だからな」


「じゃなくて、その姿ええええええええええ!?」


 ボウは刀を二本引き抜くと、マッチョたちを切り裂いた。


 その一太刀で大量のにこちゃんマークが湧き出た。


「うぉおおおおおおおおおおおお!?なんじゃこれ?」


「今こそみんなを笑顔に!!」


 にこちゃんマークたちはボウを襲い掛かった。


「芭啞火保二刀流“絶刃”!」


 だが、リベンが奥義を放ち、にこちゃんマークを切り裂いた。


「ふっ、笑顔で人を救えるわけねぇだろう」


 リベンがそう言って立ち去ろうとした。


 だが、にこちゃんマークは倒しきれていなかった。


「お前も笑顔にしてやるぅううううううううう!!」


「な…!!」


 リベンが不意を突かれた瞬間、ボウは刀を抜いた。


「倭羽羅刃流二刀流奥義“背苦破螺”!!」


 その一撃でにこちゃんマークは切り裂かれた。


「え゛がお゛!!」


 にこちゃんマークは誰も笑顔にすることなく、散っていった。


「あ…あんたらは…?」


 アレックスが驚愕していると、ボウはこう言った。


「俺の名前はボウ。お前は?」


「おれのなまえはリベンだ」


 こうして、三人はパーティを組むことになり、めっちゃ強くなった。


 その後はボウが語った通りだった。


 コザやカイステ、ビチと結託して、彼をパーティから追い出したのだ。


~◆現在◇~

「これが正解だ。お前の記憶違いだろ?」


「ペットショップに行ったら、筋肉祭りって何だよ!!お前まさかあそこにいたのか!?」


 ロークスが突っ込みを入れる、ボウは呆れながらこう言った。


「いやいや、俺があっているだろ。だから、お前パーティを追い出されるんだよ」


「ほう、三十八歳で健忘症か?」


 リベンの挑発にボウは舌打ちをすると、こう返した。


「まぁいい。文句があるなら俺のところまで来い。もっとも来れるならばな!!」


 ボウはそれだけ言うと、姿を消した。

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