第44話 すき焼き大戦争 その4

「うっ、ごめんなさい…」

「私がお肉食べ過ぎちゃって、楽しい夕食台無しにしちゃって……」


 事の重大性に気づいたのか、木葉ちゃんは急に半べそになって謝り出す!


「あっ、泣かないで、木華ちゃん!?」

「『たくさん食べて!』って言ったのはお姉ちゃんだし、それにあの食べっぷりは、見ていても気持ち良い者だったし!!」


 泣き出した木華ちゃんに対して、フォローに入るお姉ちゃん。


「しかし、どうしよ…」

「今から、お肉を買いに行くのは難しそうだし……」


 今からスーパーに牛肉を買いに行っても、すき焼き用の牛肉が置いてある保証は無いし、すき焼き自体もその間は中断と成るため、時間を押してしまう。


「……」


 私の呟いた言葉に対して、音羽ちゃんは無言で何かを考えていた。

 考えが纏まったらしく、私に声を掛けてきた。


「……恵那ちゃん。電話貸して」


 音羽ちゃんは、急に電話を貸してと言い出す!?


「えっ、電話!?」

「うっ、うん…。良いよ」


 私が了解すると音羽ちゃんは、廊下に有る電話機に向かい、何処かに電話を掛け始める。

 しばらく無言の後、相手が電話に出た様で話し始める。


「あっ、私、音羽。お母さん?」

「実は―――」


 音羽ちゃんはどうやら、家に電話を掛けている見たいだ。


「―――」


「―――」


 電話内容を盗み聞きする気は無いので、私は少し離れた場所で音羽ちゃんを眺めていた。


「―――お願いね!」


『ガチャ!』


 電話を終えた音羽ちゃんは、私の横を素通りして台所に戻る。

 私では無い人に、大事な事を言いたそうな表情で有った。


「木華!」

「もう泣かなくて良いよ。お肉、まだ有るから!」


「えっ!」


「今、お母さんに電話したら、冷凍してある鶏肉が有るらしいのよ」

「鶏肉のすき焼きも、また、美味しいよ!」


「音羽ちゃん……」


(それを伝えるために、私を素通りしたのか)


 音羽ちゃんは木華ちゃんを慰め、今度はお姉ちゃんの方に顔を向ける。


「お姉さん…」

「私の勝手の判断で、鶏肉を用意してしまいましたが、牛肉の代わりに鶏肉を入れても良いでしょうか…?」


「えっ!?」

「えぇ……良いですよ……」


 音羽ちゃんの迅速の行動で、お姉ちゃんが動揺している!!


「じゃあ、恵那ちゃん」

「そう言う訳だから、今からお肉取ってくるね!」


「あっ、うん…。気をつけてね、音羽ちゃん」


 ここでやっと私に声を掛けて、音羽ちゃんはお肉(鶏肉)を取りに家に戻って行った。


「あの子…。将来大物になるかもね…!」


 平常心に戻ったお姉ちゃんは、そんな事を言ってる。

 半べそに成っていた木華ちゃんも、追加のお肉が有る事で安心した所為か、泣き止んではいたけど、笑顔までは戻っていない……


(野菜は追加した方が良いな…。そうだ!!)


「木華ちゃん!」

「追加の野菜切るから、手伝ってくれる?」


「うん。手伝う!」

「いっぱい手伝うよ。恵那ちゃん……それとごめんね」


「んっ、急に謝ってどうしたの?」

「木華ちゃん」


「お肉の事。たくさん食べちゃって……」


「謝る事無いよ、木華ちゃん」

「ご飯が一杯食べられるのは、元気な証拠だし、一杯食べて、さっきの元気を取り戻さなくちゃ!」


「ありがとう、恵那ちゃん///」


 音羽ちゃんの機転のお陰で、すき焼きパーティーは途中終了には成らずに続けられる事に成った。

 牛肉から鶏肉のすき焼きに変更には成るが、それも『どんな味かな?』と期待する私で有った!

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