第35話 動物園 その4

「えっ、木華のおにぎりと…?」

「……だってそれ、大きさ合わないよ…」


 私は音羽ちゃんの会話を聞き、無言で2人の交換対照を見比べる。

 木華ちゃんの“おにぎり”は普通のより大きめで、海苔で全体が巻いて有る。

 音羽ちゃんのサンドイッチは、8枚切り食パン(ミミ無)を半分に切ったサイズで有った。

 サイズ的におにぎり1個と、サンドイッチ2個分の交換かと、音羽ちゃんは感じている様だ。


「え~~、ダメ?」

「だって食べてみたいもん。なら、私の蜜柑も一緒に……」


 色々な手を使って、サンドイッチ交換を目指す木華ちゃん。

 音羽ちゃんは困った顔をしながらでも、サンドイッチを食べ続けている。


(このまま音羽ちゃんは、食べきって逃げるつもりかな?)


 私がそう感じ取った時……


「木華!」

「私もうお腹一杯だから、これ食べてくれない?」


 バケット2つ入っているサンドイッチを、1つは音羽ちゃんが持ち、後の1つをバケットごと木華ちゃんに差し出す。


「え~~、良いの! 音羽ちゃん!!」


「ええ。その方がサンドイッチも喜んでくれるわ!」


 木華ちゃんは喜んで、音羽ちゃんに差し出されたサンドイッチを頬張る。


「うん、美味しい。凄く美味しいよ、音羽ちゃん!」


 見ているこっちまでが、食べたく成る表情をする木華ちゃん。


「ありがとう。実はそれ、私が作ったんだよ!」


「えっ、そうなの。音羽ちゃん!!」


 音羽ちゃんの言葉で、当然驚く木華ちゃん。

 その言葉の後、音羽ちゃんはデジカメの件を謝り出す。


「うん。それとね……さっきは本当にゴメンね。木華…」


「えっ、何がゴメンなの…?」


「デジカメのこと…」

「これ、お父さんから借りたのだけど、私のお父さん……又貸しが凄い嫌いな人だから、貸せなくて」

「木華が嫌いだから、貸さなかったって言う訳じゃないから……」


「うっと、私は別に気にしてないよ」

「それに、又貸しは良くないしね!」


「サンドイッチごちそうさま。本当に美味しかった!」

「良かったら、今度作り方教えて欲しいな。私もそろそろ、1人で料理作って見たいし」


 音羽ちゃんの理由を素直に受け入れて、それを許す木華ちゃん。


「ありがとう、木華」

「じゃあ、今度一緒に作ってみようか?」


「うん。お願いしま~す!」


「……本当に、お願いしても良いの?」

「私、結構厳しいよ…?」


「うん、良いよ。音羽ちゃんだから!!」


「ちょっと、木華。う~~~//////」


 音羽ちゃんが赤面している。

 見ているこっちまでが、むず痒しくなる場面。


 お姉ちゃんは『やっと解決ね!』と微笑んだ顔をしていた。

 お昼ご飯も食べ終わり、無事打ち解けた木華ちゃんと音羽ちゃん。

 やっと午後から、楽しいみんなで動物園の始まりです。


 ……


 お昼ご飯を食べ終わった後、しばらく談笑をしたのち、再び動物園を回る。


「今度のエリアは、ライオンが居るみたいだね!」


 お姉ちゃんはパンフレットを見ながら言う。

 ライオンが居るゾーンに来たけど、今日は日差しが強いらしくて、おりから遠い所に有る日陰でライオンは休んでいる。


「う~ん、ライオン。ちょっと遠いね~~」

「これでは、見学したとは言いにくいね…」


 お姉ちゃんは残念そうに言う。


「お姉さんはライオン好きなんですか…?」


 音羽ちゃんは、お姉ちゃんに質問をする。

 変わった事聞くな音羽ちゃん。


「うん、まあね…」

「だって百獣の王じゃない! 強いのは憧れるね~~♪」


「えっと、じゃあ……彼氏も喧嘩が強い方が好きですか!?」

「お姉さん!」


 音羽ちゃんが更に変な質問をした!!


「うあ、彼氏か……」

「そうね。男性もある程度は強い方が良いかもね」

「流石に何か問題が発生して、すぐ逃げ出す男性は駄目ね!」


「なるほど、お姉さんは、オタクが嫌いと……」


 音羽ちゃんはフムフムと頭を頷かせていた。

 けど、お姉ちゃんはオタクが嫌いとは言っていないのに、音羽ちゃんの中ではオタクが嫌いになっている。

 音羽ちゃんオタクが嫌いなのだろうか!?

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