第7話 兵士のち鬼

 兵士のち鬼


敵はこちらをまだ認識していない。だから、


「先手必勝ね~」


「そうね」


ヴィーナスさんは、手を前に出し、広げた手を握る。すると、兵士たちが囲んでいる、機械がガタガタと異音を発し、兵士たちは、逃げずに機械を弄るが、次の瞬間、機械が炸裂した。


「やっぱり、兵士の方は無傷ね。しかもあの兵士たち、防具は布製ね。で儂に対抗する為の様だわ。ちょっと鬱陶しいわね」


機械があった場所には何もなく、すべてが兵士たちに襲い掛かったのだけど、無傷のようだ。しかもただの布の服で。


「でも、これならど~お~」


今度は飛び散っていた、部品たちが集合、合体して、まるでゴーレムのようになった。


「すごいね! でも、ああいう機械って、外部から魔術的干渉ができないように魔術で守られているって聞いたんだけど、なんで突破できたの?」


「それなら、簡単よ。儂は金の希望。それになった時に手に入れた力で、金属は儂の思うがままなのよ。たとえ結界があってもね」


「でも、あの鉄くずゴーレムは?」


「あれは~あたしの魔術だよ~。そして、干渉妨害の魔法陣はさっきので壊れているんだ~」


「そうなのよ。でも、相手は最良世界からの兵士、かなり強いわ。出来るだけ死なないように助けるけど」


「うん、分かっているよ、自分の身は自分で守るよ!」


下には水がある。これなら、水のサモンエッグを使えるはず。ただの魚の形の何かだろうけど、でもそれなりに戦えるはずだよね。

水のサモンエッグを水面に落とす。その間にもペガサスは僕を乗せて、敵からの木の矢、魔力弾、を避けてくれている。ちゃぽん、水のサモンエッグが、水面に到達。召喚が始まる。青い光を放ち、水でできた魚が召喚された。大きさは、1メートルぐらいある魚は兵士の胴に噛み付く。正しくは水が包み込んだだけなんだけど。


「なんだこの攻撃は、こんな水がまとわりついたところで、何もぐぁああああああああああ!」


水の魚がくっついた兵士は、口から血を出して、その場に倒れ込む。僕はそれから目を背けて、指に火を灯して、逆の手で、火のサモンエッグを上に投げる。そして、火のサモンエッグに火をぶつける。よしこれで! あれ、出てきたのは、サラマンダーかな? 飛べなさそうだね。そのまま落ちていくよ。ごめん、水の中に落ちちゃった。


「じゃ、じゃあ水だけでいいかな」


水のサモンエッグを10個ばらまいたら、サモンエッグが着水するとともに、僕たちが入ってきたパイプの方からドン! と大きい音がした。


「お、おい何だあれ!」


兵士たちが驚いているのと、音が気になり、僕も振り向く。そこには、巨大な鬼? 身長は4~5メートル、角があり、筋肉隆々、目が黄色く光っており、お腹は出ている。こん棒を持っていないのが、鬼らしくないけど、皆が昔話の鬼ってどんなの? と聞かれると、これ、と言うだろう、鬼がいた。

それは、水の魚を蹴散らし、兵士たちを踏みつけて、なぜかこっちに向かって突撃してきている? 逃げなくちゃ!


「何あれ~! どうする~?」


「悪魔の力も感じるわね。それも本物の。それなにのに見た目は鬼なのね」


「と、とりあえず逃げよう!」


此方に向かって突進してくる鬼をペガサスに回避行動をとってもらったんだけど、


「何! あの速さ! あの巨体でこの速さは反則だよ!」


回避はギリギリ間に合ったけど、本当にギリギリだった。あと1秒でも遅れていたら、死んでいた。そう思えるようなスピードだ。


「ちょ、意識は無いのかしら! まるで戦闘狂ね」


その言葉に反応するようにヴィーナスさんを睨む鬼。


「貴方たち皆倒せば、この夢は覚めるのかしら!」


鬼の指に火の球が一つ一つと灯っていく。


「何するつもりか解らないけど、ヤバそうね、止めるわよ!」


ヴィーナスさんはその言葉と共に、多分今まで圧縮していた鎌を投げる。僕は、水のサモンエッグを11個落とし、水の魚を召喚。武備さんは手を鉄にして、手だけ巨大化。拳を振り上げる。しかし、


「間に合わなかったわね」


火の球の完成の方が、攻撃の到達より早かった。解き放たれた火の球は、鎌を焼き尽くし、水魚を蒸発させ、一つは鋼鉄の手に握りつぶされた。けど、残った4つの内、1つが此方に向かって、飛んできている。このままじゃ。

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