第71話 拝啓 いかがお過ごしですか?1 

 拝啓 鈴兄上様



 いかがお過ごしですか? 


 私も湖紗若様も元気にしております。


 鈴兄上様。初めに。これだけは分かって頂きたく存じます。


 私が、桜王家を。稜禾詠ノ国を出る事に致しました。決断は全て私一人にて決めた事。


 殿様、楓希様、陽様におかれましては、一切の関わりの無き事にございます。


 湖紗若様は、賢き子ゆえ。私が一人にて旅立つのに不安を抱いていたのを敏感に察して、一緒に行動を共にする決意をして下さったのです。



 鈴兄上様、誠に身勝手なお願いを致します事。お許し下さい。



 鈴兄上様の、稜禾詠ノ国を良くして行きたいという熱き想い。古き良き物を守りつつ、新たな改革をも取り入れて行く姿勢。


 領主としての器量を、鈴兄上様はお持ちです。どうか……稜禾詠ノ国の為にご尽力頂けませんでしょうか? 



 苗字に付きましては、桜王家と源本家は元は一つの家。源本家姓を名乗って頂いても……私の我が儘からお願いする身です。憂いも不満もありません。



 凛実の方様にも、感謝しても仕切れない程の幸せを頂きました。


 ありがとうございました。



 鈴兄上様。なずなを幸せにしてあげて下さいませ。


 私がお願いしなくても、鈴兄上様がなずなを大切に想って おられるのは分かって いるのですが。




 なずなと二人で、稜禾詠ノ国を盛り立てて行って頂きたく。どうぞ宜しくお願い致します。




 私は、鈴兄上様の妹に生まれ幸せでした。



 失礼致します。


 かしこ




 拝啓 なずな様



 いかがお過ごしですか? 


 私も湖紗若様も元気にしております。


 なずな。私が、桜王家を。稜禾詠ノ国を出る事にしたのを分かって欲しい。と願うのは私の我が儘です。



 湖紗若様には、幸せの国で。天真爛漫のまま成長して欲しいと願った。愚かな姉の決断を許して……


 湖紗若様が


『フウ ひめ さま。おいていかないで。いっしょに しあせになりましょう』



 おっしゃって下さった言葉に甘え、共に、新しい場所に旅立つ事にしたのです。


 なずな。姉妹のように過ごした日々幸せでした。貴女がいたから頑張って生きて来られたのよ。



 これからは、鈴兄上様がなずなを守って下さるわ。なずなの愛情深き優しき心で、鈴兄上様を支えてあげて下さいね。


 稜禾詠ノ国を発展させて行くには、なずなの力が不可欠です。


 なずな、誠に身勝手なお願いを致します事。お許し下さい。




 失礼致します。


 楓禾より。


 かしこ



















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