第26話 親心……切なる願い2

「楓菜姫の縁談についてです。楓菜姫の願いが。『私の運命を、受け入れます。 ただ一つわがままを許されるのならば……私が私のお慕いするお方と…… 夫婦になってよろしゅうございまか?』 だったのです」


(楓菜姫様に……縁談……?)


 爽は動揺が隠せなかった。


「なぜそれを私に……」


 聞かせるのですか? いつかこの日が来ると覚悟はしていたけれど……


 言葉にならない想い。


「ですから。楓菜姫の想い人が、貴方なのですよ。爽」


(……え?)


 楓希の方様に続いて。


「楓菜姫の願いを叶えてやりたいと思いながら親として。出自しゅつじを……相手を知らねばと楓菜姫に訪ねたのだ。『御厨爽です』と答えが返って来たのだよ」


 殿様が仰せられたのだが、爽は驚きで声が出なくなってしまって。


「楓菜姫を信じてます。けど、出自の明らかな殿方でないと…… そう考えて尋ねたのですが…… 貴方なら…… どうか、楓菜姫の願いを叶えてやってはくれませんか?」


 楓希の方様のお言葉を繰り返す。


『~どうか、楓菜姫の願いを叶えてやってはくれませんか?』


 幼い時からお慕いして来た楓菜姫様。


「近々、楓菜姫より正式な申し込みがあるゆえ……」


「失礼の段申し訳ございません。どうか私から 縁談の申し込みをさせて下さいませんか?」



 あまりの幸せに爽は泣きたかった。




 叶わぬ想いなのだ……楓菜姫様の事は諦めなければ……と。


 苦しくて。切なかった想いが……



(諦めるなんて出来ない!)


 しかし……


 男として…… 女性から。愛する人から縁談の申し込みをさせるなど……


 楓菜姫様を幸せにして差し上げたい。 想いを打ち明け。己から縁談の申し込みをして差し上げたい……


(楓菜姫様。幸せに致します)


*出自出身、生まれ、家柄








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る