悪霊退治

 妖狐先輩と悪霊退治の仕事をやっている。


 特製の薬品で悪霊をおびき出し、特製のスプレーをひたすら悪霊に吹き付ける退屈な仕事だ。


 夜の廃屋にスプレーを吹き付ける音が響く。廃屋はLEDランタンのは光に照らされ、逃げ出そうとする悪霊はスプレーの効力で弱り、消えていく。


 


 悪霊たちがどこにいくのか、わたしは知らない。そんなこと、いちいち考えていたら、仕事にならない。


 わたしは怖い。いつか自分が悪霊になってしまうのではないか。


 自分が一番嫌っているもの、軽蔑しているもの。それになってしまうのが怖い。そもそも、悪霊を軽蔑している自分は、悪霊と同類ではないか。


 頭の中が混乱する。死後の世界、魂の消滅、宇宙の終わり。わからないことが多すぎる。


 

 


 妖狐先輩はいい人だ。わたしなんかよりもずっといい人。


 そんな妖狐先輩にある日、


 「あなたはいい人だね」


 と、言われた。

 


 妖狐先輩は知らない。今のわたしが本当はどんなに卑怯で、ずる賢くて、悪い人かを。


 昔の自分なら、まだ真面目で優しい人だと言えたかもしない。


 でも、今は違う。


 毎日自分の頭を叩いて罰する。いったい、どこで間違ったのだろう。


 

 明日、わたしはこの仕事を辞める。妖狐先輩への感謝の気持ちと、わたしが今までやったことを書いた手紙を置いて。


 わたしは罪を償わなければならない。


 さぁ、最後の仕事だ。

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