第14話
レオンハルトとの食事が終わり帰る前に一度控え室に戻る。
「なんだあのクソ王子は」
「僕達のリーゼに詰め寄ろうとして」
愚痴を吐く父とアードリアンは怒った様子だけどこの部屋で一番怖いのは無言で暗器を磨いているフィーネだ。
「リーゼ、レオンハルトの様子おかしくなかった?」
耳元で尋ねてくるユリアーナに「そうね」と返事をする。食事をする間もレオンハルトが私を見つめていた事は気がついていた。最初は次期王太子妃として値踏みをされているのかと思ったけど。
「妙に悲し気に私を見ていなかった?」
「そうね、私もそう感じたわ」
あの物悲しそうな視線は何だったのだろうか。考えたところで分からないがレオンハルトにも何か事情があるのかもしれない。
「とりあえずレオンハルトとは距離を置きなさいよ」
「出来るだけそうするつもりよ」
ユリアーナと頷き合ったところで扉を叩く音が聞こえてくる。フィーネが扉を開けると居たのはベルンハルトだった。
もう自分の部屋に帰ったと思ったのに。
「ランベルト。少しだけリーゼと二人で話がしたい」
「少しだけなら良いですよ」
お父様が簡単に承諾したのに驚いている間にベルンハルトに連れ出されてしまう。握り締められた手から伝わってくる熱に安心する。
「大変だったでしょ」
「いえ。ただ面倒だなって」
連れて来られたのはお茶会で使われる事が多い薔薇園だった。人目に触れ難いところまで辿り着くと勢いよく抱き締められる。驚いて顔を上げればベルンハルトは優しく笑った。
「リーゼ、お疲れ様」
背中を撫でてくれた手が優しくて、温かくて、安心する。私の身体からは力が抜けていく。
もたれ掛かっているのに倒れず受け止めてくれるベルンハルト。
甘えたいって言ったら迷惑かしら。
「ベルン…」
ぎゅっと背中にしがみつけば強く抱き締められてより彼の温度を感じられた。
優しくて甘い良い匂いがする。
好きって気持ちが溢れ出してきたのは二人きりになったからだろう。
「ベルン、好き…」
「僕も好きだよ」
声が優しくて、耳にかかる息がちょっと熱っぽい。擽ったいのに気持ち良くてもっと言って欲しくなる。
「もっと言って」
「ずいぶん甘えん坊だね」
「駄目?」
「嬉しいよ」
たくさん好きと言って欲しくて、私も好きだと伝えたい。
頭の中がその事でいっぱいになる。
熱い手が頬を撫でて、顔がゆっくりと近づいてくる。キスをされる直前で目を閉じた。
「んっ…」
ベルンハルトとのキスは気持ちが良い。
どうしてこんなに気持ちが良いのか分からないくらい気持ち良くて、溶かされているような気分になる。もっと触れて欲しくなるし、私からも触れたくなるのだ。だからいつも人目なんて気にならないくらい夢中になってしまうのだろう。
「んんっ…」
舌が入ってきた。
気持ち良い。熱い。息が奪われてクラクラする。それなのに止まらない。水音が響いて、自分じゃないような甘えた声が出て、恥ずかしいのに気持ち良いから困ってしまう。
「はっ…」
唇が離れて、お互いの舌にかかっていた糸がぷつりと切れた。その瞬間、我に返り全身が熱くなる。
私、何してるの…。
「あ、正気に戻っちゃった?」
残念だと笑うベルンハルト。また私だけが夢中になっていたみたいだ。
「あの…」
抱き寄せられてベルンハルトの肩口に額がくっ付く。話したいから離れて欲しい。いや、やっぱり今はまともに話せそうにないのでこの体勢は助かる。
「リーゼ」
耳元にかかる息が熱い。
背中を撫でる手も熱い。
触れているところ全部が熱い。
「いつでも甘えていいからね」
「馬鹿…」
私の事、甘やかし過ぎですよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。